■プーチン氏に対する高い評価

 1997年、トランプ氏は再びモスクワへ赴くもホテル建設計画の結実には至らなかった。それでもロシアという国、そして冷徹剛腕な指導者らに向けられた視線は次第に熱を帯びていった。大統領選への出馬を初めて意識した2000年に出版した著書のなかでも、ロシアが持つ「力」への憧憬(しょうけい)をあらわにしている。

 この中でトランプ氏は、「なぜわが国の政策決定者らは、米国の存続に直接関わる問題でも、ロシアとの交渉に常に及び腰なのか理解に苦しむ」と指摘。その上で、「本物のタフガイ」と形容したレベジ氏との対面に触れ、レベジ氏こそいつかロシアを率いていく人物だと語っている。レベジ氏は2002年、ヘリコプター事故で死去している。

 2005年にトランプ氏は、ニューヨーク(New York)の開発業者ベイロックグループ(Bayrock Group)と取引するようになる。同社を創業したのは、旧ソ連出身の移民2人だった。

 ここでは、モスクワにトランプタワーに建設する契約にも調印したが、これも結局実現しなかった。一方で米国では、ニューヨーク市内に46階建ての高級マンションタワー「トランプソーホー(Trump SoHo)」をはじめ、フロリダ(Florida)州内の複数のトランプブランド物件を建設した。主な資金源そして売り込み対象はともにロシアマネーだった。この中には、後にプーチン氏に「便宜を図った」としてその存在が明らかになった、アイスランドで登録の投資会社も含まれていた。

 そして、2007年に再び大統領選を視野に入れたトランプ氏は、プーチン氏を高らかに賛美し始めた。

 当時トランプ氏はCNNに対し、「プーチン氏に、彼のロシアでの活躍に目を向けてほしい」「好き嫌いは別にしても、プーチン氏はロシアのイメージの再構築、いや、ロシアの再建そのものに素晴らしい手腕を発揮している」と評価していた。