【1月3日 AFP】新年のあいさつというのは、おおむね当たり障りのないものだ。だが、アルゼンチン公共事業省は激しい反発を招いてしまった。年越しのあいさつと共にウェブサイトに掲載した自国の地図に、英国と領有権を争うフォークランド諸島(Falkland Islands、アルゼンチン名:マルビナス諸島、Islas Malvinas)が記載されていなかったためだ。

 アルゼンチン沖にあるフォークランド諸島は、1833年から英国が実効支配を続けているが、アルゼンチンも領有権を主張している。1982年、アルゼンチン軍は同諸島に進攻し制圧。マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)首相(当時)率いる英国との間でフォークランド紛争が起きた。74日間に及んだ戦闘は英国の勝利で終結したが、英国側に255人、アルゼンチン側には649人もの死者を出した。

 こうした因縁があるだけに、退役軍人や野党の政治家たちは、諸島未記載の地図がウェブサイトに公開されるやいなや猛反発したのだ。

 フォークランド紛争を戦った退役軍人の1人はメディア取材に対し、問題の地図はミスなどではなく、昨年9月に英国と合意した石油・天然ガスの共同開発をはじめとする貿易関係を領有権よりも優先するマウリシオ・マクリ(Mauricio Macri)大統領政権のキャンペーンだと非難した。

 また、クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernandez de Kirchner)前大統領政権下で駐英大使を務めたアリシア・カストロ(Alicia Castro)氏は、諸島が含まれない地図は「容認できない」と糾弾。「骨抜きにされた地図を見て動転している」「夜も眠れない」などと地元ラジオ局に語った。

 非難の嵐に直面した公共事業省は2日、「デザイン部のミス」だとする釈明をツイッター(Twitter)を通じて発表した。

 フォークランド諸島では2013年に英国への帰属の是非を問う住民投票が行われ、圧倒的多数が英領帰属を支持した。だが、アルゼンチンはこの住民投票結果を認めていない。(c)AFP