【12月30日 AFP】女性は戦乱のイラクを逃れセルビアを目指す大勢の難民たちの一人でクルド人のイスラム教徒、男性はマケドニア国境を警備する厳格な警官隊の一員でキリスト教徒――そんな2人が出会ったのは、およそロマンスが生まれるような状況ではなかった。

 ヌーラ・アルカバジ(Noora Arkavazi)さん(20)は今年初め、戦闘状態が続くイラク東部ディヤラ(Diyala)を家族と共に脱出してドイツを目指し、3月初めにマケドニアとセルビア国境に到達した。だがここまで来てヌーラさんは高熱を出してしまった。

 ヌーラさんと虚弱な母親に毛布を確保し、手当てを受けられるようにしたのが、この日たまたま同僚と持ち場を交代し、流ちょうな英語が話せるマケドニア警官隊のボビ・ドデフスキ(Bobi Dodevski)さん(35)だった。

 ボビさんは、ヌーラさんを雨の日に初めて見たときから「彼女の瞳の中に何かを感じた」と語る。一方のヌーラさんも、難民の子どもたちに優しく接するボビさんに好感を抱いた。2人は多くの時間を共に過ごすようになり、ボビさんは今年4月、ヌーラさんにプロポーズした。

 ヌーラさんの家族はイスラム教徒ではないボビさんとの結婚に反対したが、2人は出会ってから4か月後の7月に結婚した。

 ヌーラさんの家族は現在、ドイツでつつがなく暮らしている。そのこと以外は家族について話そうとしないヌーラさんは、マケドニア北部クマノボ(Kumanovo)で、ボビさんと前妻2人との間にできた子どもたち3人を含めて幸せに暮らしている。2人の間にはもうすぐ初めての子も生まれる予定だ。

 クマノボの自宅アパートでAFPの取材に応じてくれたボビさんはインタビューの最後にこう語った。「ヌーラと私から皆さんに伝えたい。自分自身と愛、そして運命を信じてくださいと」(c)AFP