【12月21日 AFP】北朝鮮のイメージといえば、一糸乱れぬ軍事パレードの行進を思い浮かべる人は多いだろう。あるいは、たわいもない日常の一コマを、バスの窓からこっそりと撮影した写真かもしれない。

 2012年から北朝鮮を訪れて取材しているが、私が配信する写真の中には、この両方の筋書きが繰り返し登場する。その大きな理由は、よく知られているように外国メディアに対する規制のために、撮影に関する他の選択肢が厳しく制限されているためだ。しかし、2016年9月にAFPが北朝鮮の首都・平壌(Pyongyang)に支局を開設してから、私は何とかこの状況を変えようと試みている。

 

北朝鮮の首都平壌にある中央動物園の入り口で撮影された家族。(c)AFP/Ed Jones

 

 人々に近づくことは、私の写真にとって重要な側面だ。だが、北朝鮮でそれをするのは簡単ではない。街中で市民にインタビューしようとしたり、指定外の場所で写真を撮ろうとしたりすれば、たいてい、いぶかしがられる。特定の人へのインタビューや写真撮影の依頼は、支局に2人いる現地スタッフを通して行う必要がある。それでも許可が得られるとは限らない。この2人は常に取材に同行する。

 

1953年に朝鮮戦争休戦協定交渉が行われた建物の前で撮影された朝鮮人民軍陸軍中尉。この建物は、南北軍事境界線に沿って設けられている非武装地帯(DMZ)の近くにある。(c)AFP/Ed Jones

 

 私はジャーナリズムの誠実性を損なうことなく関わる人全員が快適に働くことができ、興味深い写真を生み出せるプロジェクトを模索し、被写体自身も参加できるポートレートのシリーズがいいのではないかと思い付いた。ただし元来、外国メディアに対する疑念が強いこの国では難しい仕事になりそうだった。

 

北朝鮮の首都平壌にある科学技術センターの学習室で撮影された19歳のボランティアスタッフ。(c)AFP/Ed Jones

 

 写真家としての私を突き動かすのは人々との交流だ。そしてなぜか(おそらく想像力が足りないために)、人の存在がないときの私の写真は駄作になる。ポートレートならば、その交流の機会をつくる方法があった。

 私と同僚のビデオカメラマンは、毎回決まった撮影手順を踏むことにした。私が写真を撮影している間に、映像カメラマンが短い動画も撮る。動画のクローズアップでは、被写体に自分の名前と職業を言ってもらうことにした。

 ポートレートは自然な姿が保たれている間に撮るために、できるだけ短時間で撮影を終わらせることが重要だ。被写体には立ってもらう場所だけ指定して、ポーズは自由にしてもらった。

 

北朝鮮の首都平壌にある凱旋門の頂上で撮影されたツアーガイド。(c)AFP/Ed Jones

 

 最初の何人かの撮影が終わると、現地スタッフはこのプロジェクトにすごくやる気を出したようだった。彼らは自信を持って、被写体になってくれそうな人たちに撮影の依頼をするようになった。声を掛けられた人たちも、たいていは喜んで撮影に応じてくれた。

 プロジェクトの開始当初は、平壌にあるさまざまな記念碑のツアーガイドなど、撮影に同意してくれる可能性が高そうな人たちを選んでいた。しかし、私たちが声をかけることのできる人々の範囲はすぐに広がった。広場でローラースケートをして遊んでいた少女や、開城(Kaesong)近郊で朝鮮人参を育てている農民、南北軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)に近い板門店(Panmunjom)の兵士などだ。

 

北朝鮮の首都平壌にある主体思想塔で撮影されたツアーガイド。(c)AFP/Ed Jones

 

 被写体になってくれた人たちに関するさらなる情報を得られないことも、たびたびだった。氏名を名乗ることを危惧する人もいたし、職業を明かすことを嫌がる人もいた。

 

南北軍事境界線に沿って設けられている非武装地帯(DMZ)の近くに位置する開城市郊外の畑で撮影された、朝鮮人参を栽培する農業従事者。(c)AFP/Ed Jones

 

 これまではポートレートを撮影する際には通常、一定の時間をかけて被写体との関係を築き、彼らの性格を探り、そうして知り得たことが写真に反映された。だが北朝鮮の人々の撮影は、過去に撮ってきたポートレートとは違っていた。

 

北朝鮮の首都平壌にある美術工房、万寿台創作社で働く芸術家。(c)AFP/Ed Jones

 

 確かに、これらのポートレートは短時間で撮影したものだし、被写体となることに同意してくれた人の大部分は口数が少なかったが、たとえ一瞬でも、そこには親密になれた瞬間があった。それは構えのない、本物の親密さだと思った。

 このポートレートのシリーズが特別独創的なわけでも、画期的なプロジェクトでもないことは分かっている。けれど、北朝鮮の人たちと一緒に作り上げたことによって、私がいつもこの国から送信する写真に欠けがちな、生き生きとした表情を見せることができていたらと思う。(c)AFP/Ed Jones

 

北朝鮮の首都平壌にある金日成広場でインラインスケートの練習をする学生。(c)AFP/Ed Jones

 

このコラムは、韓国ソウルに拠点を置く北朝鮮・韓国担当チーフフォトグラファーのエド・ジョーンズ(Ed Jones)が執筆し、2016年12月8日に配信された記事を日本語に翻訳したものです。