【12月30日 AFP】ボルドー(Bordeaux)やシャンパーニュ(Champagne)地方といったフランス・ワインの名産地から遠く離れた首都パリ(Paris)で、「アーバンワイナリー」(都会のワイン醸造所)が定着しつつある。

 パリでワインメーカー「ビニュロン・パリジャン(Vignerons Parisiens)」を立ち上げた共同創設者のマチュー・ボセール(Matthieu Bosser)さんは「ずっと前からワインを造りたいと思っていた」と語る。だが、パリ生まれの彼は「この街が大好きで、他の場所に移りたくはなかった。それでふと思った。『パリでワインを造ることはできないだろうか?』と」。夢の実現には2年という期間と40万ユーロ(約4800万円)の資金、さらに膨大な量の書類手続きが必要だったが、答えは「イエス」だった。

 最初の収穫年だった2015年には、ボセール氏はブドウを栽培している仏南部のローヌ渓谷(Rhone Valley)へ出かけ、4人の共同出資者と一緒にブドウを圧搾し、搾り出した果汁をパリで醸造した。

 だが、今年はブドウの圧搾からワインの瓶詰めまでの工程をすべてパリの流行の発信地、マレ(Marais)地区にある面積200平方メートルの醸造所の裏手で行った。ブドウは3週間前にパリに到着し、5つある容量3000リットルのステンレス製のたるの1つに保存された。「現代の民間会社が市内で圧搾を行ったのは今日が初めてですよ」とボセールさんは語った。パリ北部のモンマルトル(Montmartre)には1930年代から続くワイン農園があるが、これは地元自治体の運営で、年間のワイン生産量は2000本にも満たない。

 ビニュロン・パリジャンがパリで行っていない工程はブドウの栽培だけだ。それ以外の作業をパリでするようになったのは今年の春から。その数か月前には別のワインメーカー「ワイナリー・パリジェンヌ(Winerie Parisienne)」も、パリ東部郊外のモントルイユ(Montreuil)の印刷所跡地に1200平方メートルの醸造所を開いている。