【12月13日 AFP】米連邦最高裁判所は12日、脳疾患を抱えるアメリカンフットボールの元選手らへの補償として、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)が示した推定10億ドル(約1150億円)の和解案に対する不服申し立てを却下した。これにより正式に補償内容が確定し、元選手らへの支払いが行われることになった。

 今回の訴訟では、一部の選手が慢性外傷性脳症(CTE)の犠牲者への補償内容が十分ではないとして、和解案の受け入れを拒否していた。CTEは、死亡した一部の元選手に見つかった脳疾患として知られているが、存命中の人に対しては診断が不可能とされている。

 補償金の支払い対象となるのは、現役時代に受けた脳振とうに関連した脳疾患を抱えている2万人以上の元選手で、和解案は今後65年にわたり有効とされる。

 和解を受け入れていた選手らの弁護側は、「この裁定により、ようやく引退したNFL選手が待ち望んでいた介護や、現在直面している深刻な神経認知疾患で援助を受けることになる」とこの日の裁定を歓迎。NFL側も裁判所の決定を称賛し、「責任者と和解案を実行に移し、元選手とそのご家族が受け取りを待ちわびていた重要な扶助金を支払っていくことを楽しみにしている」と述べた。

 NFLは今年はじめ、アメフトとCTEとの関連を初めて認めていたが、和解案の条件には、リーグ側は一切の過失を認めないという内容が含まれていた。

 NFLの元選手ではおよそ6000人、10人中3人前後が、アルツハイマー病もしくは認知症を発症する可能性があるとみられている。

 米誌スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)によれば、選手は年齢や経験年数によって、平均19万ドル(約2200万円)を受け取ることになるという。

 また、ルー・ゲーリッグ病(Lou Gehrig's Disease)とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された選手は、最大で500万ドル(約5億8000万円)の補償が受けられる。

 一方、CTEと診断された選手の家族は、最大で400万ドル(約4億6000万円)を受け取り、パーキンソン病やアルツハイマー病を患った選手は、350万ドル(約4億円)まで補償されることになっている。(c)AFP