【12月12日 AFP】バングラデシュで放映されているトルコのドラマが「過激なセックス描写」によってバングラデシュのテレビ業界に打撃を与え、国民の離婚まで増長しているとして、同国の業界関係者らが12日、このドラマの放映禁止を訴えた。

 バングラデシュ監督組合(Bangladeshi Directors' Guild)が問題視しているのは、「壮麗帝(Suleiman the Magnificent)」として知られる16世紀オスマン(Ottoman)帝国の皇帝、スレイマン1世(スレイマン大帝、Suleiman I)を題材にした吹き替え版の連続ドラマ「スルタン・スレイマン(Sultan Suleiman)」。2015年11月から放映が開始され、高視聴率を獲得している。

 その人気ぶりを見せつけられた他のテレビ局は、ゴールデンタイムに同じような海外の連続ドラマの放映を開始。おかげで国内制作ドラマの多くが放映スケジュールから外された。業界の代表者らは、自国の俳優たちが多額の出演料をもらう機会を逸し、撮影スタジオ数十か所が閉鎖を余儀なくされたと訴えている。

「すべては、スルタン・スレイマンが始まりだ。あの連続ドラマが、何千人もの俳優やスタッフを抱えているわが国の業界を破壊した」と監督組合のガジ・ラカイェット(Gazi Rakayet)代表は批判している。同氏によると、国内の撮影スタジオの半分が稼働不足で閉鎖し、またトップレベルの俳優でも出演料が半減。バングラデシュの俳優たちが失った出演料は総計で、年間およそ800万ドル(約9億2600万円)に上るという。

 バングラデシュ政府はこれまで反応を示していないが、国内ドラマのあらすじがつまらないから視聴者は外国ドラマに流れるのだとして、外国ドラマを擁護するコメンテーターもいる。

 一方で外国ドラマは、保守的なイスラム教国であるバングラデシュの家族観を破壊しているという意見も上がっている。特に「スルタン・スレイマン」でのハーレムのシーンは批判を招いている。俳優で業界団体の代表を務めるマムヌール・ラシッド(Mamunur Rashid)氏はAFPの取材に対し「スルタン・スレイマンなど外国のドラマシリーズには、セックスシーンがあふれている。テレビは家族の娯楽であり、人気だけが評価基準になってはいけない」と述べた。またラシッド氏によれば、次から次へと相手を変えたベッドシーンが登場するドラマは、離婚率上昇という社会問題を生み出していると指摘。「そうした番組が浮気シーンを見せるからだ」と述べた。(c)AFP