【1月2日 AFP】イランの丘陵地帯や砂漠の平原地帯をほぼ単独で長年にわたり調査し続け、古代の岩壁画を数多く発見したイラン人考古学者がいる。

 イラン中部の町ホメイン(Khomein)郊外の岩が散在する荒涼とした場所にもこうした岩壁画はあった。貴重な壁画がこのような場所に存在していたとはにわかに信じがたいほどだ。

 丘の斜面をよじ登り、頂上に到着したモハメド・ナセリファルド(Mohammed Naserifard)博士は、平らな岩の上に描かれた長い巻き角を持つアイベックスの絵をつえで指し示した。約4000年前に彫られたと考えられているものだ。

 博士は、これまでに国内20州に及ぶ総距離70万キロ以上を旅してきた。発見した古代の絵画や彫刻の数は、約5万点に上るだろうとAFPの取材に語った。

 これらの岩壁画はすべて数千年前のものだが、宗教的儀式で使用されていたとみられる一列に並んだ杯の印などは、さらに古い時代のものと思われる。2008年にナセリファルド博士とともにこの地域を訪れたオランダの専門家らは、これらの杯の絵を4万年以上前のものと推定し、世界最古の岩壁画の一つだとした。

 しかし確実なデータを入手することは、当時のイラン人考古学者らにとってはほぼ不可能だった。経済制裁下にあったためだ。博士はAFPの取材に「経済制裁が、われわれから科学を取り上げてしまった」と胸の内を吐露した。

 イランの核開発問題をめぐる国際経済制裁が昨年に解除されるまで、イランの科学者らは、国外の研究者らとの交流が遮断された。その上、最新の実験装置の入手や最新研究に触れることができなくなり、深刻な資金不足にも陥った。ナセリファルド博士は「今は状況が改善してきたので、こうした新しい技術をすぐにでもイランに導入し、壁画についてのより正確で科学的な情報を入手したい」と語った。(c)AFP/Eric Randolph