【12月5日 AFP】内戦が続くシリアではここ数年間、同国第2の都市アレッポ(Aleppo)の分断された東西地域をバスで移動するために、市民らは時に危険をも伴う10時間の長旅を強いられてきた。しかし今月3日、政府軍が支配する西部と、政府軍が奪還したばかりの東部地域を結ぶバスの運行が始まり、その所要時間は30分に短縮された。

 政府軍がアレッポ東部にある反体制派の拠点6割を奪還した後、西部から東部へと運行したバスは少なくとも10台に上る。どのバスも東部に戻ろうとする人々ですし詰め状態だった。多くのバスには、シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の写真や、シリアや同国を支援しているロシアの国旗が掲げられていた。

 夫と息子と一緒にバスに乗っていたハラ・ハッサン・ファレス(Hala Hassan Fares)さんはAFPの取材に対して、自宅には6年近く帰っていないことを明かした。

「私たちの家は全焼したが、80歳になる私の父に会いに行く」とファレスさんは語った。

 アレッポは、2011年3月に反体制派の抗議運動が始まって以来、30万人以上の死者が出ている内戦の激戦地となった。

 2012年に反体制派がアレッポ東部を掌握してから、政府が運営するバスは運休していた。市民は中部にあるブスタンアルカスル(Bustan al-Qasr)地区の検問所を通り、爆撃の合間を縫うように移動していた。しかし、2014年にはこのルートも狙撃手に狙われるようになったため、アレッポの反対側に行くには、民間のバスで10時間かけて迂回(うかい)するしかなくなっていた。

 しかし、国営バス会社の車両は、このほどの運行開始によって中部の政府支配地域のみを通り、政府軍が先日奪還したアレッポ東部のマサケンハナノ(Masaken Hanano)地区まで30分で到着できるようになった。

 運行ルートには、爆撃を受けて所々陥没した道路や、焼け焦げた車両があちこちに放置されている。マサケンハナノでは、政府軍がアレッポ全域を奪還するために攻勢を強め、今も爆発音が鳴り響いていた。

 バスはがたがた揺れたが、東部までの運行を再開したバスの1台に乗ったファレスさんはうれしそうだった。「道路には大きな穴がたくさん開いていて胃が痛くなる。けれども、これまで一番順調な旅に思える」とほほ笑んだ。(c)AFP/Youssef Karwashan