【12月31日 AFP】アルゼンチンの首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)近郊にある教会で、牧師のマヌエル・アクニャ(Manuel Acuna)さん(54)は汗だくで金切り声をあげる女性に聖水をふりかけ、十字架を振って女性の頭に片手を置いた──。

 これは、ホラー映画の一場面ではない。アクニャ牧師が運営するキリスト教福音派の「悪魔払い教室」で実際に行われている儀式の様子だ。中南米地域で創設された同種の施設としては最も古いものの一つとされているアクニャ牧師の教室では「悪魔払いのコンサルタント」が養成されている。

 生徒らは、「超心理学、天使学、悪魔学」と題された講座を3年にわたって学び、月謝は47ドル(約5500円)。現在は35人の生徒がいる。

 お香の匂いが強く漂う施設内で行われたAFPの取材にアクニャ牧師は「生徒たちは悪魔の特徴や能力を学んでいます」と語り、そして「悪魔払いのコンサルタントは、悪魔の存在、憑依(ひょうい)、抑圧、脅迫観念、呪いなどを見極める必要がある」と続けた。

 悪魔払いが執り行われる夜には、熱心な信者たちがアクニャ牧師の「善き羊飼い教会(Good Shepherd Church)」に詰め掛ける。

 その一方で、聖職者仲間の中にはアクニャ牧師に疑いの目を向ける人もいる。

 これについてアクニャ牧師は、「これまで色々な名称で呼ばれてきた。でもエクソシスト(悪魔払い師)になることを自ら選んだわけではない。これは神のおぼしめしなのです」と語った。

■神のためか、それとも商売か

 教会の壁には数々の著名人と一緒に写るアクニャ牧師の写真が飾られている。中には同じアルゼンチン人であるフランシスコ(Francis)法王と一緒のものもある。

 フランシスコ法王をはじめ中南米やメキシコの聖職者のほとんどはカトリックだが、アクニャ牧師は違う。彼は米ニューヨーク(New York)を拠点とする独立系福音ルーテル教会連合(Association of Independent Evangelical Lutheran Churches)に所属するプロテスタントの牧師だ。

 AFPが他のルーテル教会4か所で聖職者たちを取材したところ、アクニャ牧師と彼の学校からは距離を置いているとの声が各所で聞かれた。その中の1人は、悪魔払いを教えることは不可能だと考えているとしながら、「うたい文句のどこまでが真実でどこまでがビジネスなのか、自問せざるを得ない」「どれだけが評判や名声、権力、金を得るためのもので、どれだけが本当に神の真実につながっているのだろうか?」と話した。