【1月1日 AFP】顔に泥を塗ったスマダルさん(18)は自動小銃を首にかけ、イバラの茂みをほふく前進で進む。厳しい訓練にもかかわらず笑顔を見せると、彼女の上官――こちらも女性――が大きな声で励ましの言葉をかける。

 スマダルさん(イスラエル軍の軍規で、名字を明かすことは許可されていない)は「この部隊を選んで後悔していない」と語る。「可能な限り最も戦闘的な部隊で、兵役を過ごしたかったから」

 イスラエル軍の中ではひっそりと重大な変化が起きている。スマダルさんは今増加中の、戦闘部隊に合流する女性兵士の一人だ。同軍によると、戦闘部隊に所属する女性兵士の割合は、ほんの4年前まで約3%に過ぎなかったが、今では7%に上っている。2017年にはさらに増え、9.5%に達しそうだ。

 戦闘部隊所属の女性兵士が増加している要因には、二つの社会的変化がある。女性が戦闘部隊に加わることが拒絶されなくなったことと、男性の兵役期間の短縮による徴兵可能な兵士数の不足だ。イスラエルで軍は社会の中核に存在する機関だ。国民のほぼ全員に兵役義務が課せられるため、こうした軍の変化は組織の外へも影響する。

■兵役の「男女平等」

 イスラエル軍は現在、中東最強を誇るが、1948年にイスラエルが建国されるずっと前から、今の軍の前身となったユダヤ人の軍事組織ハガナー(Haganah)で、女性たちは重要な役割を果たしていた。

 イスラエルは現在、満18歳になった国民に対し、男性には2年8か月、女性には2年の兵役を義務付けている。女性の配属先はこれまで衛生兵や通信兵などに限られてきたが、これが急速に変わりつつある。

 2000年、法改正により「兵役に就く際の女性の権利は、いかなる地位においても男性の権利と平等」とされた。この年、イスラエル軍史上初の男女混成部隊、「カラカル大隊(Caracal Battalion)」が創設された。

 スマダルさんは同じく男女混成部隊のバルデラス大隊(Bardelas Battalion)に合流するために、北部ガリラヤ(Galilee)地方の丘陵地帯で訓練を積んでいる。訓練を終えると、南部の半砂漠地帯に駐屯することになる。

 イスラエル軍には現在三つの男女混成部隊があり、2017年3月には4番目の部隊が創設される予定だ。戦闘部隊への加入を希望する女性の兵役期間は8か月延び、男性の兵役期間と同様になるが、スマダルさんは「男性にできることなら、女性にだってできる」と語る。

 中東地域の大半の保守傾向とは対照的に、イスラエル軍はさまざまな人種・民族的背景や性的指向の国民を迎え入れ、社会を統合するツールとしての役割を果たしてきた。現在、12万人以上が兵役中とされ、軍当局によるとそのうち41%以上が女性だという。また女性が就くことのできる職種は全体の85%となっている。

 一方、1948年以来、イスラエル軍では44人の女性兵士が戦死している。(c)AFP/Michael Blum