■「宇宙人に感謝すべき」

 FASTは、電波による干渉を低減させるための緩衝圏が必要で、半径5キロにわたり電子機器の使用が禁じられている。

 国営新華社(Xinhua)通信は、FASTが完成した7月、この地域から移動した住民らについて、「より良い生活水準が期待できる」「近隣の人々がその幸運をうらやましがっている。彼らは宇宙人に感謝すべきだ」などと報じていた。

 だが、地元住民らは補償金なしでの土地の収奪、強制取り壊し、違法拘束などが行われたとして、平塘県当局を相手取り訴訟を起こした。原告は最大500家族に上るとみられている。

 29日の審理である原告は、留守の間に警告や同意なしで家屋を取り壊され、家財道具を埋められたと話した。さらに別の住人も、「彼ら(当局者)はわれわれを沼地に追いやり、そこに住むよう命令した。これまでの生活水準も維持できない場所だ。ほぼ全員にとって、基本的な生命維持の問題になっている」と述べた。

 人々の家のがれきはいまや地中に埋もれ、その場所は緩衝圏の外側に設けられた観光客向けの公園施設のための苗木の生産地となっている。公園には博物館、宇宙をテーマにしたホテルとレセプション施設が設備される。

 平塘県当局のウエブサイトによると、この公園は都市部の富裕層をターゲットとしており、総工費は15億元(約248億円)と望遠鏡そのものよりも高い。

■威圧的な態度

 訴訟の大半を手掛けている南部・広東(Guangdong)省広州(Guangzhou)市の法律事務所関係者は、当局から「重要な国家的プロジェクトのために大きな視野を持て」と威圧的な態度で迫られたことをAFPに明らかにした。

 そして、「これは経済的利害の問題だけではない。一般市民に対してひざまずけと強要したり乱暴をはたらいたりすると、これは人権と中国の法治の問題に関わることになる」と指摘した。

 平塘県当局はAFPのコメント要請に応じていない。(c)AFP/Becky Davis