【11月23日 AFP】イヌの回想能力が、これまで考えられていたよりも高い可能性があることを示唆する研究結果が23日、発表された。忘れっぽさや気移りに関して、イヌはいわれのない非難を受けてきたのかもしれない。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された研究論文は、イヌには人の直近の行動を記憶する能力があるように見受けられると記された。

 この種の回想能力は、エピソード記憶として知られている。この能力により、頭の中で時間の流れをさかのぼり、出来事の細部を思い出すことができる。

 エピソード記憶は、ヒトを含む霊長類に存在することが知られているが、これがイヌにもあることが示されたのは今回の研究が初めてだ。

 研究を率いたクラウディア・フガザ(Claudia Fugazza)氏は、イヌに「今朝あったことを覚えてる?」と単純に質問することは不可能であることを指摘しながら、今回の研究では、自身が開発した訓練技術「Do As I Do(する通りにやってみて)」を適用したと説明。これは、イヌが聞かれたことに行動で答えることができるようにする技術なのだという。

 この手法に従うと、イヌは人の行動をまねるように訓練される。

 例えば人が、いすの上に立つ、空中に飛び跳ねる、傘をたたく、という動作をしたとする。そして、その人が「やってみて」と言うと、イヌは、その合図に合わせて同じ動作をするよう訓練される。

 今回の研究では、最初にこの手法でイヌ17匹を訓練し、褒美を与えた。次に、トレーナーがどんな動作をしても、地面に伏せているようイヌたちを訓練した。

 そして、トレーナーが突然「やってみて」と言うと、イヌたちは褒美がなくても、前に見たトレーナーの行動と同じことをした。

 フガザ氏によると、この手法は、イヌに人まねをさせる段階を超えて、イヌが過去に見た行動を不意に思い出せるかどうかを調べるところにまで及んでいるという。同氏は、ハンガリーの「MTA-ELTE Comparative Ethology Research Group」として知られる、世界最大のイヌ研究組織の一つと共同で研究を行っている。

「この手法で訓練したイヌは、間に24時間を挟んだ後でも、飼い主の行動をまねすることができる」とフガザ氏は説明。「つまり、時間を挟んで『やってみて』の命令をイヌに出すことは、『飼い主がしたことを覚えてる?』と彼らに聞くのと同じことなのだ」と付け加えた。