【11月21日 AFP】国連(UN)は20日、シリア北部の激戦地アレッポ(Aleppo)の情勢について、人道危機を回避する「時間切れが迫っている」と警鐘を鳴らした。また、反体制派が支配する東部では包囲下にある約25万人の市民が緊急の医療支援を必要としているにもかかわらず、もはや機能している病院は皆無だとの声明を発表した。

 シリア国営メディアによるとアレッポではこの日、反体制派の砲弾が政府の支配する市西部に着弾し、小学校の生徒少なくとも8人が死亡した。一方、在英のNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によれば、同日にアレッポ東部で激しい戦闘があり、子ども5人を含む少なくとも19人の市民が死亡したという。

 アレッポでは政府軍が15日に東部の奪還を目指して激しい攻撃を開始。国際社会の懸念が高まっている。

 国連のスタファン・デミストゥラ(Staffan de Mistura)シリア問題担当特使は20日、シリアのワリード・ムアレム(Walid Muallem)外相との会談後、記者団に対し「時間切れが迫っている」「激化する軍事行動によって、クリスマスまでにアレッポ東部は事実上、完全に崩壊してしまうだろう」と警告。「20万人がトルコへ向かう可能性がある。そうなれば、人道上の大惨事になる」と語った。

 ムアレム外相によるとデミストゥラ特使は、アレッポ市内の停戦と、東部に反体制派の自治を認める提案をシリア政府に示したが、政府側は「断固として拒否した」という。

 一方、国連の専門機関である世界保健機関(WHO)は20日、アレッポ東部からの報告として、「包囲下にある地域では、もはや機能している病院は1つもない。アレッポ東部では、25万人以上の男女や子どもたちが医療ケアのないまま暮らしている」との声明を発表。小規模のクリニックが限られた医療サービスを提供しているものの、最も必要な外傷治療や外科手術、重傷者の治療などは完全に不可能な状態だと述べた。

 シリアの内戦では、医療施設を狙った攻撃が相次いでおり、15日から続く政府の攻撃でも病院への爆撃が繰り返されていた。(c)AFP