【12月2日 AFP】モロッコ東部の乾燥した山岳地帯の人々は、水の価値を嫌というほど分かっている。

 環境団体「人間と環境(Homme et Environnement)」を率いるナジブ・バチリ(Bachiri)氏は、「電気が通っていないので、農民は農業用水を雨水かディーゼル発電機でくみ上げた地下水のいずれかに頼るしかないと語る。

 最近までは近くのアルジェリア国境を越えての密輸が横行していたおかげで、発電機用の燃料だけは安く手に入った。しかし2013年にアルジェリア当局が不法取引の厳重な取り締まりは始めてからは、燃料価格は3倍に跳ね上がった。

 悪いことは重なるもので、さらに、モロッコ政府がディーゼル燃料への補助金を廃止したことで、ディーゼル燃料に頼っていた農民たちにとって状況はさらに悪化した。

■より安く、よりきれいに

 そうした状況からバチリ氏の団体は、地元や国外からの支援を受けて、タフォラルト(Tafoughalt)の山岳地帯に太陽光発電を利用して地下水をくみ上げる「送水ポンプ」2基を設置した。

 ポンプを動かす発電機には、縦2メートル、横10メートルに並べられた太陽光パネルがつながれており、発電機に電力を供給している。

 この装置は耐久性が高く、維持管理も比較的簡単。太陽光は半永久的に供給され、汚染や健康への悪影響という観点においてディーゼル燃料のようなマイナス面はない。

 地元のある農民によると、水のくみ上げは冬季や曇りのときは弱まるが、太陽が出ているときはくみ上げとかんがいは倍増するという。

 さらに、かんがいにかかる1時間当たりの費用は75%減少した。(c)AFP/Jalal AL MAKHFI