【11月19日 AFP】英上院で今週、警察や情報機関の監視権限を大幅に拡大する法案が可決された。エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の裁可によって成立する。ただ、反対派からは「西欧民主主義の歴史で過去に例を見ないほど広範な監視法だ」などと批判する声が上がっている。

 上院を通過したのは、英国の監視関連の法律としては15年ぶりの大幅改定となる「調査権限法(Investigatory Powers Bill)」。ウェブサイトの運営者などにユーザーの閲覧履歴を最長1年間保存することを義務付け、法執行機関が捜査に活用できるようにすることなどが柱だ。

 さらに、これまでも存在していたものの、法的な根拠があいまいだったコンピューターや携帯電話をハッキングする権限について、法的な裏付けを与える規定なども盛り込まれている。

 法案は、テリーザ・メイ(Theresa May)首相が内相だった今年3月に議会に提出。その際にメイ氏は、インターネット通信の変化を反映させるための「世界をリードする」法案だと胸を張った。

 一方、反対派は「のぞき見法」などと反発。当局が電子メールや通話、ショートメッセージ、ウェブサイト閲覧の履歴全体を保持して利用することは、プライバシーに関する基本的人権の侵害にあたると非難している。

 米政府による大規模な情報収集活動を暴露した元米国家安全保障局(NSA)職員のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者は、簡易ブログのツイッター(Twitter)に「多くの独裁国家のさらに先を行く(監視)権限だ」と投稿。「英国は西欧民主主義の歴史上、最も過激な監視活動を合法化してしまった」と批判した。

 英人権団体リバティ(Liberty)は、人権法に抵触するとして欧州司法裁判所(European Court of Justice)に提訴しており、来年判決が出る見通しだ。(c)AFP