■代表監督は現実を指摘

 生徒たちは人工芝のピッチで練習に汗を流し、それ以外の時間は、歴代の指導者の肖像画の飾られた教室で学業にいそしむ。しかし、男子フル代表で指揮を執るノルウェー出身のヨルン・アンデルセン(Jorn Andersen)監督は、鼻息の荒いリ氏とは対照的に、世界レベルのスターの出現はまだ考えにくいと指摘する。

 アンデルセン監督は「アジアレベルで優秀な選手が生まれることはあるかもしれないが、リオネル・メッシを輩出できるとは思わない。才能ある選手は多いが、国を離れられないのが痛い。外に出られないんだ」と話し、欧州の「高いレベル、競争の激しいサッカー」を経験する必要があるとの見解を示した。

 5月に北朝鮮代表と1年間の契約を結んだアンデルセン監督は、「いつまでも中(北朝鮮)でプレーしていたら、優秀な選手が生まれるのは難しい」と話している。

 ピッチ外の状況も厳しい。2015年の女子W杯(2015 FIFA Women's World Cup)では、前回大会の出場選手5人に薬物違反があったとして、予選と本大会への参加を禁止された。当時のチーム医師は、雷に打たれた選手を治療するため、鹿の角の成分の入った「漢方薬」を処方しただけだと主張している。

 2016年11月には、わざとゴールを許したとして、男子U-16代表GKのチャン・ペッコ(Jang Paek-Ho)が罰金と1年間の出場禁止処分を受けた。相手GKからのキックを見送ってそのままゴールに入れてしまう失笑ものの動画は、ネット上でまたたく間に拡散した。

 北朝鮮サッカーにとって一番の障害は実戦不足だ。国内のクラブはアジア・サッカー連盟(AFC)の管轄大会に参加しておらず、実戦の場は11チームで構成される国内リーグ戦のみ。試合数は少なく、観客もわずか200~300人ほどしか集まらない。

 アンデルセン監督は、「代表チームの選手は私と一緒にいますが、実戦経験を積むことができません。いつも練習して、練習して、練習しての繰り返し。試合ができないんです」と話した。