【11月7日 AFP】米国で10年ごとに国勢調査が行われるたびに、中東および北アフリカ地域にルーツを持つ市民たちは不本意ながらも調査票の「白人」「黒人」「その他」の項目から1つを選んできた──。

 だが米国勢調査局(Census Bureau)はこのほど、調査票を45年ぶりに見直し、「アフリカ系米国人(African-American)」「インド系(Asian Indian)」といった新たな項目の追加を検討している。

 国勢調査局のアナリスト、レイチェル・マークス(Rachel Marks)氏はAFPの取材に「この調査は人種と民族性に関するデータの向上を目的としている」と説明。これによって米国で拡大する人種と民族の多様性を反映した重要な情報を提供できると語った。「中東・北アフリカ(Middle East-North African)系」の追加に関する審査はほぼ終了しているという。

 国勢調査票の見直しに関しては、主にイスラム教徒で構成される、これらの非白人・黒人社会で意見が割れている。具体的な数字が示されることによって、政治的発言力が高まると歓迎する声がある一方、イスラム教徒への風当たりが強くなっていることを背景に、目立つことに不安を覚えるとの意見もある。

 米国のムスリム団体「US Council of Muslim Organizations」のウサマ・ジャマル(Oussama Jammal)代表は、米大統領選にドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が立候補する時代にこうした動きは危険だと危惧する。「イスラム教徒の入国を禁止したり、監視対象にしたりすることを主張する人物にこのような道具を与えることを、私たちは本当に望んでいるのでしょうか?」

 ただ、誰もが1つの点では一致している。イラン、レバノン、サウジアラビアといった国にルーツを持つ人々が、公式の人種区分を選ぶか否かの決断を迫られているということだ。「私たちは白人なのですか?たとえ北アフリカの出身だとしても私たちは決して黒人ではない。問われているのは皮膚の色ですか?それとも出身地域なのでしょうか?だれもがジレンマを抱えている」とジャマル氏は指摘した。