【11月2日 AFP】がんによる女性の年間死者数が2030年までに550万人に達する見通しであることが、米国がん協会(ACS)などが1日に発表した報告書で明らかになった。これは、デンマークの人口にほぼ匹敵する数字で、20年足らずで60%近い増加となる。

 報告書によると、世界の人口が増大、高齢化するにつれて、がんによる女性の死者数が低所得国と中所得国で過去最悪となるが、その大半は、ほとんどが予防可能だという。

 米国がん協会の世界保健部門を統括するサリー・コーワル(Sally Cowal)氏は、女性のがん死の大半が若年成人期と中年期に起き、家庭と国家の経済に重い負担がかかると指摘した。ACSは、米医薬品大手メルク(Merck)と共同で、今回の報告書をまとめた。

 コーワル氏はAFPの取材に対し、今回の調査では「がんによる負担の増大と闘うための資源、そして予防策と治療の可用性における大きな地域的格差の存在が浮き彫りになった」と話した。

 報告書によると、世界の女性はすでに7人に1人が、がんで死亡しており、がんは循環器疾患に次いで死因の第2位となっている。

 女性のがん死因の上位4位を占める乳がん、大腸がん、肺がん、子宮頸(けい)がんはすべて、大部分が予防可能か、治療の成功率が高くなる早期に発見できるものだ。

 貧困国では、診断と治療を施されるがん患者の全体に占める割合が、富裕国に比べてはるかに小さい一方で、死亡に至る患者群の割合は富裕国よりはるかに大きい。

 基礎医療の向上によって人の寿命が延びるにつれて、発展途上国では、がんに関連する負担がますます増大している。

「運動不足、不健康な食事、肥満、(出産年齢の高齢化などの)生殖性因子など」の「急速な経済変化に関連する」既知のがん危険因子に、発展途上国の女性がさらされる機会がますます増えていると、コーワル氏は指摘。報告書「Global Burden of Cancer in Women(女性のがんによる世界の疾病負担)」には、「このような変化が原因で、かつては高所得国でしか多く認められなかったがんが、さらに広くまん延しつつある」と記された。

 今回の報告書は、仏パリ(Paris)で開催された「世界がん会議(World Cancer Congress)」で発表された。

 世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)によると、2012年に世界の女性の間で発生した新規のがん患者数は670万人で、死者数は350万人に達した。患者の56%、死者の64%は、発展途上国で発生していた。

「人口増加と高齢化の結果として、これらの数字は2030年までに、女性の年間患者数が990万人に、年間死者数が550万人へと、それぞれ増加することが予想される」と報告書は指摘している。