【11月1日 AFP】西洋絵画の巨匠パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の作品約300点を自宅車庫で約40年間保管していた元電気工の男(77)が、ピカソの息子のクロード・ピカソ(Claude Picasso)氏に告訴され、盗品所持で有罪となった裁判の控訴審で、被告はピカソの夫人がピカソ家から作品を隠そうとしたのではないかと新たに証言した。

 盗品所持で昨年、妻と共に有罪判決を受けた元電気工のピエール・ルゲネク(Pierre Le Guennec)被告は、仏南部エクサンプロバンス(Aix en Provence)で行われた控訴審で「ジャクリーヌ・ピカソ(Jacqueline Picasso)夫人は、継子(けいし)であるクロード・ピカソ氏との関係が悪かった」と震える声で新たな証言をした。

 ピカソ家の用務係だったルゲネク被告は、ジャクリーヌ夫人は「恐らく」作品を財産目録に載せたくなかったのではないかと述べた。また、これまでの裁判でこの証言を行ってこなかったことについて「妻と共にごみ袋(に入った作品)を盗んだことにされるのが怖かった」と語った。

 ルゲネク被告は、1973年のピカソの死去後、ジャクリーヌ夫人から作品が入ったごみ袋15~17袋を保管するよう依頼されたと語った。後に夫人は袋を取りに来たが、1袋は「あなたにあげます」と言って譲られたと述べた。ルゲネク夫婦のそれまでの献身の見返りとして渡されたもので、作品180点と、スケッチブック1冊に収められた描画91点の計271点だったという。

 これら作品について「線画とスケッチ、しわくちゃの紙」と表現したルゲネク被告は長い間、特に気にも留めず、2009年に再び目にするまでごみ袋を車庫に置いたままだった。

 ルゲネク被告は下級審では、ピカソが存命中の1971年~1972年にスケッチを譲り受けたと証言していた。被告夫婦の弁護人もわずか数日前に新たな証言を知ったという。

■ピカソ息子代理人「信じがたいうそ」

 このルゲネク被告の新証言に対し、ピカソの息子のクロード氏の代理人、ジャンジャック・ノイヤー(Jean-Jacques Neuer)氏は「信じがたいうそだ」と怒りをあらわにし、本件は「芸術作品の国際的な盗品ロンダリング」に関与する「アート市場の最も暗く、最も力を持つ」勢力を巻き込んだ事件だと語った。

 またクリストファー・ラフィン(Christophe Raffin)検事は「(ルゲネク被告が所持していたピカソ作品が)贈られたという話は信じられない。これは高齢になったピカソ夫妻からの窃盗だと思う」と述べた。

 検察は昨年3月にルゲネク夫婦に言い渡された禁錮2年の下級審判決を支持するよう求めている。判決は12月16日に言い渡される。(c)AFP/Andrea PALASCIANO