■地元市場での歓待に感激

 客人を盛大にもてなすことではインドは群を抜く。シェフ・クラブのシェフたちもインドで自らが仕える王族のごとくの歓待を受けた。

 ヒンズー教の祭り「ディワリ(Diwali)」を控えていつも以上に混雑した旧市街のスパイスマーケットを訪れた真っ白なコックコート姿のシェフたちは、バラの花びらのシャワーを浴び、ジャスミンの花で作った首飾りをかけてもらった。

 引退するまでに仏大統領6人のシェフを務めてきたベルナール・ヴォション(Bernard Vaussion)氏は人混みをかきわけるようにマーケットの通路を歩きながら「ここは素晴らしい!」と感嘆した。「汚れているし騒がしいが、そんなのはどうでもいい。こんな経験はなかなかできない」

 イタリア大統領に仕えるファブリツィオ・ボカ(Fabrizio Boca)氏も、他のシェフたちと共にインドの多種多様なスパイスを学ぼうと熱い関心を示していた。

 米ホワイトハウス(White House)の料理人クリステタ・カマーフォード(Cristeta Comerford)氏は参加したシェフ17人の中で唯一の女性だ。フィリピン系米国人の彼女はインドの料理はフィリピンのものと似ているとAFPに語った。「レシピに従って作るのではなく、もっと哲学的なものなんです」

■トップシェフたちの固い絆

 シェフ・クラブには「ブルー・テレフォン」と呼ばれるホットラインがある。首脳の公式訪問が決まると、迎える側のシェフはこの電話を通じて先方のシェフに電話をかけて首脳が好む料理などを相談するのだ。

 どのシェフも自らが仕える首脳の味の嗜好(しこう)については多くを明かさないが、料理に旬の食材を取り入れることがますます重要だという点と晩さん会のメニューはより軽く健康的なものになっているという点では、みな見解が一致している。

 英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)のシェフを務めるマーク・フラナガン(Mark Flanagan)氏によれば「持続可能な地元の食材を探し求める傾向が、より顕著になっている」という。(c)AFP/Claire COZENS