【10月28日 AFP】地中海沿岸地域では、地球温暖化によって過去1万年で経験したことのないような環境の変化が起こる可能性が高いと警告する研究結果が27日、発表された。これにより、森林の樹木構成に変化が生じ、欧州の一部が砂漠化するという。

 生物多様性が脅かされている「ホットスポット」の一つとして知られる地中海地域では、温暖化が急速に進行している。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文によると、現在の地中海沿岸地域の気温は1880~1920年の期間に比べ、すでに1.3度上昇しているという。世界の他の地域では、産業革命以前比で平均約0.85度上昇となっている。

 世界の指導者らは昨年仏パリ(Paris)で、世界平均気温の上昇幅を産業革命前の水準から2度未満にとどめる目標を掲げ、その上でさらに厳しい水準となる1.5度に向け取り組むことで合意した。

 研究チームは、地中海沿岸地域が将来的にどのように変化するかをシミュレートするため、堆積物に含まれる花粉の芯を分析。ここで得られるデータからは、過去1万年にわたる気候と生態系の変化を知ることができるのだという。

 研究では、化石燃料の使用とそれに関連する温暖化の勢いが弱まらず、今世紀末まで「現状維持」になるとの条件の下、広範囲の地形がどのように変化するかを予測した。

 仏エクス・マルセイユ大学(Aix-Marseille University)のウォルフガング・クラマー(Wolfgang Cramer)氏とジョエル・ギオ(Joel Guiot)氏が主導した研究論文によると、シミュレーションの結果は「スペイン南部全域が砂漠化する」というものになったという。

 他方で、山地の大半では落葉樹が繁茂するようになり、また同地域に現存するの落葉樹林の大半が低木地の草木に取って代わられることも予想された。

 これらの変化は、地球が過去1万年間に経験した水準を「大幅に上回る」と考えられる。「生態系の変化が過去1万年に経験された上限の範囲内にとどまるのは、世界気温の上昇を産業革命前より1.5度に抑えるシナリオに従う場合に限られる」と研究者らは述べている。

 ただ、1.5度未満に抑えられた場合でも、状況は予測よりはるかに悪化する可能性がある。今回の最新分析では、都市化や土壌侵食、土地利用の変化などの、生態系に対するその他の人為的影響が考慮されていないためだ。(c)AFP