【10月26日 AFP】英語で書かれた小説を対象とした文学賞としては世界で最も権威がある英「ブッカー賞(Man Booker Prize)」の今年の受賞作に、米作家ポール・ビーティー(Paul Beatty)氏の小説「ザ・セルアウト(The Sellout、原題)」が25日選ばれた。米国人によるブッカー賞の受賞は初めて。

 選考委員会は、ビーティー氏はこの小説で出身地ロサンゼルス(Los Angeles)を「強烈かつ予想もつかないほど滑稽に」描き出し、架空の舞台における人種間平等のあり方を風刺を駆使して探り出したと高く評価した。

 チャールズ皇太子(Prince Charles)の妻カミラ夫人(Duchess of Cornwall, Camilla)から賞を受け取ったビーティー氏は感極まった様子で、「これまでの道のりがどれほど長いものだったか、語り尽くせない」と言葉を絞り出した。

 選考委員会は受賞作について「愛情を抱きつつも辛辣(しんらつ)な皮肉をこめてロサンゼルスとその住民を描き、人種間の関係性や解決策、あるいは決め付けといった固定観念をはぐらかしてみせた」と指摘。「その魅力的なまでに正直で善意あふれる主人公を通して、無邪気な人間から見た腐敗した世界を提示してみせた」と評した。

「ザ・セルアウト」はビーティー氏の4作目となる小説で、今年の全米批評家協会賞(National Book Critics Circle Awards)も受賞している。

 ブッカー賞はかつては英連邦とその旧加盟国の作家のみを対象にしていたが、2013年に米国をはじめとする英語圏諸国の作家にも門戸が開かれた。(c)AFP