【10月23日 AFP】家族と同居する17歳の福士リナ(Rina Fukushi)は、普通の女子高生とはまったく違う世界を経験している。ハンバーガーを食べたり、弟と遊んだりするとき以外に、「ミュウミュウ(Miu Miu)」や「マーク ジェイコブス(Marc Jacobs)」のランウェイを歩き、ヨーロッパやニューヨークで新人モデルとしてセンセーションを巻き起こしているのだ。

 福士は、14歳のときにモデルとして見出された。その大きな瞳、太い眉、ふっくらとした唇は、ヴォーグ(Vogue)誌に「最高にクール」で「目を引く」と評された。米モデルのジジ・ハディッド(Gigi Hadid)やケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)も参加するパリ、ニューヨーク、ミラノのランウェイではすでに常連である。

「スカウトされたときから、自分が有名になると分かっていた。でもまだ信じられないときもある」と福士は言う。明るく友好的な性格で、くすくすとよく笑うが、この若さにしてはしっかりと自分を持っている。福士は「アマゾン ファッション ウィーク 東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」期間の過密なスケジュールの中、シックなカフェでAFPの取材にこたえてくれた。言語の違いを巧みなジェスチャーでフォローしながら笑顔で語り、シャイな部分と活発な部分の両面が見え隠れする。彼女は申し分なく礼儀正しく、そしてファッションの世界に完全に心奪われていた。

 旅先でも、ヴィンテージショップで古着を漁るのが好きだという彼女は、パリで買った黒いスカートに、日本で買った黒のタートルネック、そしてミラノで買ったハンドバッグを合わせてインタビューに現れた。首もとには「リナ」と名前が刻まれたシルバーのペンダントが揺れ、手には昨晩ショーに出演したばかりの日本のブランド「ビューティフル ピープル(beautiful people)」のレザージャケットを持っていた。

 福士のスケジュールは多忙を極める。朝7時に起床し、夜の10時まで数々のショーに出演。ベッドにもぐりこめるのは夜中の1時頃だと言う。

■ニューヨークが大好き

 そんな仕事のスケジュールと学業を両立させるため、現在は通信制高校で学んでいる。来年3月の卒業を心待ちにしており、その後は大好きなニューヨークにより長く滞在してみたいと言う。東京に比べてニューヨークは騒がしく汚いのではないかと尋ねると「人がすごく素敵だから好き」と福士は笑った。ニューヨークの活気や多様性、積極性を彼女は愛しているのだ。

「マーク・ジェイコブス」のショーへの出演は、記憶に強く残っているという。17年春夏コレクションに登場したレインボーカラーのドレッドヘアについて、「すごくかわいい、とにかくかわいい」と福士。だが、高い厚底ブーツに関しては「絶対転ばないぞ、と思いながら歩いた」と笑った。

 素顔の彼女は、輝くようなナチュラルビューティーだ。ダークブラウンの髪は、肩下まで届く。前はもっと長いロングヘアだったが、「アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)」のショーのバックステージでいきなりばっさりと切られてしまった。そんなプロ意識が高く、指示に快く従うモデルの福士に、ニューヨークの都会派デザイナーであるワンは「すごく優しかった」と言う。「おもしろい顔だね、どこの出身なんだ? って聞かれた」と福士はほほ笑む。

 日本のメディアに「エキゾチック」と評されることもある福士は、スペインとフィリピンのクオーターの母と、日本とアメリカのハーフの父を持つ。フィリピンのマニラで誕生後すぐに日本に戻り、東京で育ち、タガログ語と日本語を操る。

 福士は14歳のとき、友人と初めて買い物に訪れた原宿で、3つのモデル事務所からスカウトされた。最後に声をかけた現在のエージェント、小桜真由美(Mayumi Kozakura)は「彼女は身体のバランスがすごく良かった」と語る。

■日本人モデルであること

 しかし176cmという福士の身長は、西洋のランウェイモデルの基準としては低い方だ。福士が英モデル、ケイト・モス(Kate Moss)に憧れる理由の一つは、モスがその身長にもかかわらず、新たな美の標準のパイオニアとなったからだ。「とにかく服が似合う。見た目だけじゃなく、モデルとして大事な精神的な美しさを持っている」と福士は言う。

 東京のコレクションでは、多くの日本人デザイナーが白人モデルを起用し、日本人モデルを避ける傾向がある。ヨーロッパやニューヨークのランウェイではモデルの多様性が強く求められているにもかかわらずだ。「私は、自分を好きで自信をもっているから、日本人やアジア人だからなんなの? と思っている」と福士は言う。「日本人ですみません、とは思わない。私も服が似合うわよって自信を持っていたら、見る人に違和感もないだろうし。私はアジア人と言われても全然いやじゃない」

 彼女の夢はビッグだ。「シャネル(Chanel)」のランウェイやキャンペーンモデルに選ばれること。あるいはそのあと女優や歌手になることも夢見ている。休日にはJポップ音楽を聞いたり、落ちついた自然の中で過ごしたりすることが好きだと言うが、なかなか休みをとることは難しい。仕事をしていないときは、寝るか食べるかしかないと福士は笑う。ニューヨークで食べるハンバーガーやステーキが、彼女のひそかな好物だ。(c)AFP /JENNIE MATTHEW