【10月22日 AFP】欧州連合(EU)とカナダが締結を目指す包括的経済貿易協定(CETA)に署名する権限をベルギー連邦政府に与えるよう、ベルギー南部ワロン(Wallonia)地域を説得する交渉が21日、失敗に終わった。これにより7年かけて交渉してきたCETAの調印が不可能となり、カナダはEUを激しく非難した。

 仏語圏のワロン地域政府首相との交渉を終えて出てきたとき、カナダのクリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)国際貿易相は今にも泣きだしそうだった。

 フリーランド国際貿易相は「私の、そしてカナダの立場から見て、いまのEUには、カナダのように欧州的な価値観を有し、カナダのように親切で忍耐強い国との間でさえ国際的な協定を結ぶ能力がないのは明らかであるように思えます」とコメントした。

 ワロン地域の首府ナミュール(Namur)での交渉を終えたフリーランド国際貿易相は、何度も言葉を切って心を落ち着けながら「カナダは失望しています。私自身について言えば非常に失望しています」と述べた。

「私は精一杯、懸命に取り組んできましたが、(ワロン地域の説得は)不可能だと思います。わたしたちは帰国すると決めました。とても、とても残念です。本心からそう思う。良いことといえば明日の朝になれば私の3人の子どもたちに会えることくらいです」 

 カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は来週、CETAに調印するためベルギー・ブリュッセル(Brussels)を訪問する予定となっているが、この予定が中止になるのはほぼ確実とみられる。

 ポール・マニェット(Paul Magnette)ワロン地域政府首相はAFPに対し、ワロン地域にはもっと時間が必要だが、協定締結の余地はまだ残っていると述べた。

 ワロン地域政府は今週、CETAに署名する権限をベルギー連邦政府に与えないと決議していた。CETA調印にはEU加盟28か国すべての支持を得る必要があるが、使用言語ごとにいくつかの地域に分かれているベルギーの複雑な政治制度の下で連邦政府が正式に承認するには、まず地域議会など7つの議会が、協定に署名する権限を連邦政府に与えなければならないことになっている。

 グローバリズムに反対するグループが、CETAよりも異論が多く交渉が行き詰まっているEU・米国間の自由貿易協定TTIPを推し進めるためのテストケースになる恐れがあるとしてCETAに反対しており、複数の都市で両協定に対する抗議を行っている。

 マニェット地域政府首相は21日、CETAとTTIPに含まれる投資保護スキームが特に物議を醸し、活動家らの怒りを呼んでいると指摘した。

 このワロン危機はEUに多大な影響を及ぼす可能性があり、欧州理事会(European Council)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)常任議長(EU大統領)は20日、カナダとの協定締結に失敗した場合、他の協定を締結することもできなくなる恐れがあると警鐘を鳴らした。(c)AFP/Lachlan CARMICHAEL