【10月20日 AFP】数々の米軍基地とスキューバダイビングの人気スポットで知られる沖縄が、ビーチリゾートや第二次世界大戦(World War II)の戦跡以外に、ハイファッションの発信地としても名乗りを上げている。

 飛行機で東京から2時間半、台湾にも程近い沖縄の環境は、都心とはまったく異なる。タイツやテーラードジャケットなどが秋に流行する東京では、あまり“リゾートウェア”は注目されないかもしれない。だがそんな東京の意向をよそに、2つの沖縄発ブランド「オキナワメイド(Okinawamade)」と「レキオ(LEQUIO)」が遥かな展望を描いている。

 両ブランドのディレクターは「アマゾン ファッション ウィーク 東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」の間、バイヤーやジャーナリストに会うため東京に滞在していた。しかし彼らはより多くの観客をターゲットにするため、ショーを東京でなく沖縄で行い、それをインターネット上で中継するという方法を選んだ。

■地域性を活かしたファッション

「ファッションは東京だけのものじゃないと証明したかった」と語るのは、「オキナワメイド」のクリエイティヴ・ディレクター、吉田ロベルト(Roberto Yoshida)。日本の人口は、イギリスの約2倍にあたる1億2千万人。それぞれの地域性を活かせば、ファッションウィークはもっと面白くなるというのが吉田の考えだ。

 スペイン人の祖母を持つ38歳の吉田は、「ホンダ(Honda)」のバイクウェアのデザインを手がけ、また米ロックスター、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)らを顧客に持つハイエンドな別ブランドも手がけるデザイナー。22日に開催するファッションショーでは、沖縄の古い小学校を舞台に、地元の女性たちをモデルに起用する。「沖縄を代表するブランドを立ち上げるのが、高校の時からの夢だった」と吉田は語る。

「オキナワメイド」はメンズウェアのブランドだが、幅広い層を魅了している。顧客の7割は10代から30代の女性で、また3割が主に中国や台湾、香港などの海外からだという。

■アメリカからの“影響”

 吉田の友人でもある、嘉数義成(Yoshinari Kakazu)がディレクターを務める「レキオ」が伝えるのは、青い空や海、ハイビスカスといった沖縄の典型的なイメージではなく、その独特の文化と背景だ。「沖縄にしかないものを作りたい」と嘉数は語る。17年春夏コレクションでは、伝統的な沖縄の藍染、琉球藍を取り上げた。今後は農業にも携わり、衰退しつつある染料の生産を支援していくつもりだという。藍染のTシャツも、琉球藍を使った作品の一つだ。美しくやわらかな生地に染められた複雑な白い模様は、琉球舞踊の踊り手である嘉数の母親の着物がもとになっている。

「レキオ」の別ライン「メイド・イン・オキュパイド・ジャパン(Made in Occupied Japan)=占領下の日本製の意味」では米軍放出品のテントなどを使い、バッグを作っている。今シーズンも、米軍のコートを使ったフード付きのサマードレスが発表された。

 現在、日本には約4万7000人の米兵が駐留し、その半数以上が沖縄を拠点にしている。沖縄は第二次対戦後、27年間にわたり米国統治下にあった。米国文化は沖縄に大きな影響を与えたと同時に、米兵による暴行事件などはつねに論争や抗議運動の的となっているのも事実だ。「僕たちは負の遺産を、プラスの意味で展開していく皮肉をこめてこの命名をした」と嘉数は説明する。

■グローバルな展望を抱いて

 しかし嘉数も吉田も、地元に職をもたらす一面も持つ米軍基地に関してはコメントを控える。両者とも米国人の友人を多く持ち、米国から多大な影響を受けてきた。今回「レキオ」のショーは、嘉数が「沖縄のビバリーヒルズ」と呼ぶ、米軍将校たちのかつての住宅の中庭で開催され、17日にライブ配信された。

 吉田はAFPの取材に、自らデザインしたミッキーマウス(Mickey Mouse)と「OKINAWA」のロゴを描かれたスウェットとラッパー風のキャップ姿で現れた。フランス人デザイナー、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が今年、自身の活動拠点であるロサンゼルスで「サンローラン(Saint Laurent)」のショーを開催したことにインスパイアされたという。

 大量消費主義へと突き進むアメリカとは対照的に、吉田はブランドのエクスクルーシブ性を固く守っている。「オキナワメイド」はオンラインサイトと、たったひとつの小規模な東京の店舗で販売され、店は週末のみオープン。人々は、服を買う限られた機会のために列をなす。「小さなブランドが大きなブランドと競合するほうが面白い。こういったやり方を続けたら、いつか『ナイキ(Nike)』や『シュプリーム(Supreme)』からコラボレーションの声がかかるのではないかと思っている」

「レキオ」も大きな野望を抱く。「私たちは、カジュアルなひねりを加えたラグジュアリーなリゾートドレスを提案している」とデザイナーの出利葉弘喜(Hiloki Deliva)は語る。「ぜひ世界中の人に着てもらいたい」。(c)AFP/JENNIE MATTHEW