【10月19日 AFP】イラク軍が開始したイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」からのモスル(Mosul)奪還作戦をめぐり、欧州の当局者や専門家は18日までに、奪還に成功すればIS戦闘員が新たに欧州に流入してくる恐れがあると相次いで警鐘を鳴らした。既にイスラム過激派による襲撃が続発している域内で治安をめぐる懸念に拍車が掛かっている。

 欧州では過去2年間、ジハード(聖戦)に参加するため数千人がイラクやシリアへ向かった。しかし、今年に入ってから両国でのISの支配領域が縮小しているため、一部は欧州に戻り始めている。

 欧州連合(EU)欧州委員会のジュリアン・キング(Julian King)委員(安全保障同盟担当)はドイツ日刊紙ウェルト(Die Welt)に対し、モスル奪還に成功すれば「暴力的なIS戦闘員の欧州帰還を招きかねない」との見方を示した。

 キング氏はモスルから欧州へIS戦闘員が大量に逃げてくる可能性は低いとしながらも、少数でも「深刻な脅威であり、それに備えなければならない」と強調した。同氏によれば、イラクやシリアの戦闘地域には欧州出身のIS戦闘員が依然として2500人程度いるという。

 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のラファエロ・パントゥーチ(Raffaello Pantucci)国際安全保障担当部長は英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)への寄稿で、ISがイラクの最大拠点であるモスルを失えば新たな戦闘員の勧誘にはマイナスになる可能性があるが、「家」を失ったIS戦闘員は西側諸国にとって危険な存在になるはずだと警告した。

 パントゥーチ氏は「指導者を持たず、革命の志にも欠けるIS戦闘員は今後、世界各地の治安当局者にとって脅威になるだろう」と述べている。

 テロ対応を専門とする英コンサルティング会社イプソ(Ippso)のマネジングディレクター、クリス・フィリップス(Chris Phillips)氏はISについて「新しい局面に入りつつある」と指摘。「カリフの支配」を失う中でゲリラ行為やテロ活動を増やさざるを得なくなると予想した。(c)AFP/Hui Min NEO