【10月19日 AFP】イラク北部モスル(Mosul)出身の警察官アハメドさんにとって、政府による同市の奪還作戦は、2年前に戦いに敗れて去った故郷に、イラク部隊の一員として凱旋(がいせん)するチャンスだ。

 アハメドさん(姓は家族を報復行為から守るため伏せられている)は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との戦闘に加わり、ISがモスルを制圧した2014年6月、自爆攻撃を受けて負傷した。

 国内避難民向けのキャンプで半年以上生活した後、家族の元に身を寄せていたアハメドさんは警察に復職し、現在は同国北部に派遣されている。

 ISがイラクで掌握する最後の都市モスルの奪還作戦で、イラク部隊は、2014年に撤退を余儀なくされた同地に再び足を踏み入れることになる。同地での敗北は、過去最悪の規模となった。

 ハイダル・アバディ(Haider al-Abadi)首相は17日、長く待たれた攻撃の開始を発表した。

 モスル出身で、市内には今も親族が暮らしているアハメドさんにとって、この作戦には個人的な思い入れも強い。「自分の家へ、家族と仲間の元へ帰る」ということと、アハメドさんはAFPの電話取材に述べた。そして、「私の友人たちにとっても同じだ。皆、親族がそこにいる」「家族と親戚を救出する」機会だと続けた。

 さらに、「国がわれわれを反逆者という目で見ていると常に感じている。その逆なのだと証明したい」と、アハメドさんはもう一つの動機についても語った。

 2014年にISがモスルに攻勢を仕掛けたのは、アハメドさんが警察勤務を開始してから約2年後のことだ。アハメドさんはその日、朝早くから出動してISとの数時間に及ぶ戦闘に参加していた。しかし弾薬が尽きて退却せざるを得ず、その際に仲間2人が死亡した。

 その後、爆発物を積んだタンクローリーの自爆攻撃が起き、警察部隊の大佐1人が死亡、アハメドさんも脚にけがをした。

 バグダッド(Baghdad)から援軍が到着するという情報もあったが実現せず、アハメドさんらは戦闘からの撤退を命じられた。「士気はそがれ、自分たちは死んだのだと思った」と振り返った。