■陥落後に強いられた避難生活

 2014年6月10日に陥落したモスルでの戦いは、文字通りの大敗に終わった。その裏で、司令部や首相の重大な過失が指摘されている。

 モスル陥落をめぐる議会の調査によると、拘束した1人のIS司令官が、攻撃日程や予定進路を明かすなど、差し迫った状況についての情報が数多く得られていたにもかかわらず、それらは生かされずにISの計画通りに攻撃は実行された。

 調査によって幹部らの不適切な行動も露呈した。ある将校はモスル陥落前夜に装甲車数十台を率いて同市西部を離れ、「戦闘員らの士気を大きく低下させた」と報告書は指摘している。

 さらに当時の首相、ヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)氏が「無能な指導者や司令官」を任命したことで、軍は既に弱体化していたという。その上、イラク地上部隊を統率する将校が、モスルの部隊に人員や装備を供給することを怠った。

 モスル陥落により、アハメドさんは避難生活を余儀なくされた。その後、モスルが位置するニナワ(Nineveh)州の警察官に対して任務に戻るよう要請が出されると、アハメドさんはそれに応じ、約8か月間、無給で勤務した。

 アハメドさんはISと戦う米主導の連合軍部隊による訓練などにも参加したが、現在は再び州警察の一員として任務に就いている。

 連合軍から空爆や訓練、武器供与の面で支援を受けたイラク部隊は、ISに対する攻勢を一段と強め、ISが2014~15年に掌握した地域の多くを奪還した。

 アハメドさんの部隊は他の部隊が奪還した別地域の守備に当たっているが、アハメドさんが本当に加わりたいのはモスル奪還作戦だという。

「神のご加護を得て、不正を働く者らからわれわれの権利を取り戻し、われわれの土地を奪還して守っていきたい」と、アハメドさんは語った。(c)AFP/W.G. Dunlop