【10月18日 AFP】国連食糧農業機関(FAO)は17日、南アジアやアフリカを中心とする国々では2030年までに、気候変動の影響によって小規模農家の収穫量が激減し、極度の貧困に陥る人が最大で1億2200万人増える恐れがあると警鐘を鳴らした。

 FAOが発表した年次報告書によると、気候変動による影響が大きい場合の最悪のシナリオでは、農業で生計を立てている人々が非常に大きな打撃を受ける恐れがあるという。

 世界の温室効果ガス排出量の約21%の原因となっている農業は、気候変動の一因になっていると同時に、干ばつや洪水により作物が被害を受けるなどその犠牲にもなっている。窒素利用効率が高く、高温に強い作物の栽培や、より良い節水方法の開発など気候変動に対応する方法を採用することで、数百万人の栄養不良を改善できるとFAOは指摘している。

 FAOは、気候変動の影響の大きさを検討するため、影響が大きい場合と小さい場合それぞれのシナリオを基に予測モデルを作成し、気候変動が起きない場合の第3のケースと比較した。

 それによると、地球温暖化が起きなければ大半の地域では経済成長が飢餓の危機に直面する人の数を減らす方向に働くが、気候変動が起きた場合に従来とあまり変わらない取り組みにとどまれば、世界の貧困者数は2030年までに3500万~1億2200万人程度増える恐れがあることが明らかになった。

 最悪のシナリオでは、新たに貧困状態に陥る人々は、南アジアで6200万人、アフリカで4300万人に上るという。

 FAOは、2015年に締結されたパリ協定(Paris Agreement)参加国に対し、発展途上国の気候変動対策を支援する必要性を強調し、「約束の実行」を呼び掛けている。具体的には、技術革新や気候変動対策の途上国向けファイナンスへの支援、公共・民間投資を刺激するための国際財政の活用などを挙げている。(c)AFP/Fanny CARRIER