【10月13日 AFP】鳴き声を発する鳥が、恐竜時代に生息していたことを示す驚くべき化石を発見したとする研究論文が12日、発表された。ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)や他の恐竜たちも、われわれ人間と同様に鳥の鳴き声で目覚めていたのかもしれないが、それは美しいさえずりというよりは、「クラクション」といった音に近かったようだ。

 論文によると、知られている中で最古の鳥類の発声器官「鳴管(めいかん)」の化石は南極で見つかった。化石は、恐竜時代の最終章に当たる約6800万年前の後期白亜紀の大空を、鳥たちが縦横に飛行していたことを示しているという。

 すぐに腐敗・分解する軟骨でできている鳴管の、これまで最古とされていた化石標本は、わずか250万年前の時代のものだった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の主執筆者で、米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のジュリア・クラーク(Julia Clarke)准教授(古生物学)は、発見された鳴管の化石が「ベガビス・イアアイ(Vegavis iaai)」として知られる鳥類種に属するもので、「現存するカモ類にみられる非対称形を示している」と指摘。鳴管の構造が「警笛や笛の音に似た鳴き声を上げる能力があること」を示唆しているとAFPの取材に語った。

 ベガビス・イアアイをめぐっては、1億8600万年続いた中生代に生息していた唯一の正真正銘の鳥類──飛行する恐竜ではなく──で、その名前は古生物学者らの間ですでに広く知られていた。他にも、まだ未発見の鳥類がいた可能性はもちろんある。

 中生代の終わりには、地球環境を激変させる天体衝突事象が発生した。小惑星が衝突した可能性が高いと考えられているこの事象では、地球上の動植物の4分の3が死滅した。

 クラーク准教授は、南極で発見された鳴管が示しているのは「恐竜たちの頭上で、鳥たちが仲間同士で鳴き声を交わしていたことだ」と述べる。

 この鳴管は、石化した輪状軟骨があることが確認された一握りの化石記録のうちの一つ。輪状軟骨は、軟組織の発音膜を支える骨だ。研究チームは今回、X線マイクロトモグラフィーと呼ばれる高分解能の撮像技術を使用して化石標本をスキャンし、そのデータを基に立体モデルを構成することに成功した。

 そして、鳴管の持ち主だった鳥が発していた鳴き声を的確に理解するために、研究チームはこの立体モデルを現代の鳥類数十種と比較した。その結果、外見がカモやガチョウに似ているとすれば、鳴き声もそれらに似て「ガーガー」や「クワックワッ」だった可能性が高いとの結論に達したという。(c)AFP