【10月10日 AFP】(更新、写真追加)米大統領選はミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)で9日夜に第2回テレビ討論会が行われ、わいせつ発言が女性蔑視だとして激しい逆風にさらされている共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、問題の発言を「更衣室の雑談」に過ぎないと一蹴した一方、民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官の夫ビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領の過去の性的不品行を批判した。

「ビル・クリントンのことを考えたら、あっちの方がはるかにたちが悪い」とトランプ氏は主張。「私の場合は言葉だけだが、彼は行為を伴っていた」として、「この国の政治史上で、あれほど女性にひどいことをした人間は他にはいない」と述べた。

 対するクリントン前国務長官は、トランプ氏のわいせつ発言には本性が現れているだけだと反撃した。

 さらにトランプ氏は、クリントン前国務長官が公務で私用メールを使っていた問題をめぐり「私が大統領になったら、司法長官に指示して特別検察官にあなたの状況を捜査させる」と宣言。「トランプ氏のような気質の人物には、わが国の法律を任せないほうが絶対に良い」とクリントン氏が応じると「なぜなら、あなたが刑務所に入れられてしまうからだ」と返した。

 討論会に先立ち、トランプ氏はクリントン元大統領から性的暴行などを受けたと主張する女性たちを伴って記者会見。「非常に勇気のある女性たち」として、アーカンソー(Arkansas)州知事時代にセクハラ行為を受けたとして元大統領を提訴した元州政府職員ポーラ・ジョーンズ(Paula Jones)さんや、1978年に同氏から性的暴行を受けたと主張しているフアニタ・ブロードリック(Juanita Broaddrick)さんらを紹介した。

 SNS最大手のフェイスブック(Facebook)で生中継された映像で、トランプ氏の隣に座ったブロードリックさんは、「トランプ氏は確かに汚い言葉を使ったかもしれませんが、ビル・クリントンは私をレイプし、ヒラリー・クリントンは私を脅しました。比較にならないと思います」と述べた。

■「逆戻り」「殴ってやりたい」非難続々

 トランプ氏がわいせつな言葉で女性について語っている映像が公開されたことを受け、共和党員からは怒りの声が噴出。8日までに上院議員10人以上、下院議員12人、州知事3人がトランプ氏への支持を撤回した。トランプ氏に大統領選選挙戦撤退を促す声や、副大統領候補のマイク・ペンス(Mike Pence)インディアナ(Indiana)州知事が代わりに大統領候補になるべきだとの声も上がっている。

 米メディアはトランプ氏の女性蔑視発言の記録を次々に発掘。トランプ氏が2002年のラジオ番組出演で娘のイヴァンカ・トランプ(Ivanka Trump)さんについて「イケてるスケ」という表現に同意し、一定年齢以上の女性と付き合うのはごめんだと述べて「35歳? チェックアウト時間だ」と発言したインタビューなどが明るみに出た。

 第2回討論会に先立ちバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、地元イリノイ(Illinois)州で行われた民主党の選挙集会で、「私たちがこれまでに成し遂げてきたあらゆる進歩を、逆戻りさせる権利をドナルド・トランプに与えるリスクを本当に冒すのか?」と人々に問いかけ、次のように批判した。

「繰り返す必要はないだろう。ここには子供たちもいる。トランプ氏は女性だけでなく、マイノリティーや移民、他の宗教を信仰する人々をおとしめ、侮辱し、障害のある人たちを笑い者にしている。他人をこき下ろすことで威張っている」

 また、米俳優・映画監督のロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)さんは「(トランプ氏の)顔を殴ってやりたい」とコメントしている。(c)AFP