【10月9日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)は8日、スポーツ界に影を落としたドーピング問題を受けて「五輪サミット」を開催し、世界反ドーピング機関(WADA)に対して「新たな検査機関の創設」を求め、ドーピング違反者の処分決定権をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に移譲する提案をした。

 これらの改革案は、これまでドーピング検査違反者に対する制裁の権限を持っていたものの、幾度となく競技をクリーンに保つことに失敗してきた各国際スポーツ連盟に対する叱責だといえる。オリンピックムーブメントが最大の危機に取り組む中、スイス・ローザンヌ(Lausanne)でサミットを開催したIOCは、声明で「各スポーツ団体から独立した反ドーピング検査機関を設立することで一致した」と発表している。

 今回の提案は、ロシアで数年間にわたり30以上の競技で国家ぐるみのドーピングが横行していたとする証拠に対し、迅速な対応をとらなかったとして批判されていたWADA側が実質的に勝利したとみられており、クレイグ・リーディー(Craig Reedie)会長は「とてもうれしい」としたうえで、IOCの提案は「WADAの体制を強化する。われわれには新たに多大な権限、権力が与えられることになり満足している」と語った。

 WADAは機関の新設を監督することに加え、国際的な反ドーピングへの取り組みにおける監察的な役割は維持され、新機関にどの程度の影響力を持つことになるかは明言されなかったが、検査機関と取り締まり的な役割を担うWADAとの間には、「明確な任務の分離」があるとIOCは強調した。

 一方、CASはこれまで各競技団体によって制裁を受けた選手からの訴えを受け、ドーピング違反者に対して処分を与える主要な役割を果たしているが、IOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は、CASが懲罰について最初の決定を下すことができるシステムをつくることで、透明性と一貫性が向上すると考えている。

 バッハ会長はまた、リオ五輪期間中はCASがドーピングに関するすべての事案について決定を下したが、そのいずれに対しても上訴されることはなかったと付け加え、CASの権威が広く尊重されていることを示した。

 リオ五輪に影を落としたロシアのスキャンダル以外にも、ケニアの陸上代表がドーピング違反で汚染されているなど、他にもさまざまな薬物使用の発覚が五輪における競技の健全性に疑問を投げかけていた。IOCは今後も、「より健全で効率的、透明性が高く、調和のとれたWADAの反ドーピングシステムを目指して努力する」と語った。(c)AFP/Eric BERNAUDEAU