【10月9日 AFP】ハンガリーで8日、同国最大の野党系日刊紙が活動を停止し、右派のオルバン・ビクトル(Orban Viktor)政権下で政府に批判的なメディアが置かれた立場への懸念がいっそう強まった。

 左派系日刊紙ネープサバチャーグ(Nepszabadsag、人民の自由)のオーナー企業のメディアワークス(Mediaworks)は多額の損金に言及し、同紙のオンライン版と印刷版の発行中止は純粋に商業的な理由によるものだと述べた。

 オルバン首相率いる右寄りの与党フィデス・ハンガリー市民連盟(Fidesz)はネープサバチャーグの活動停止を「政治的決定ではなく合理的な経済的決定」だと述べた。

 しかし野党、活動家、同紙の記者らはこの動きを、オルバン政権が政府の指示に従わないメディアをつぶしたものだとして批判した。

 ネープサバチャーグはしばしばオルバン政権に批判的な記事を掲載してきた。オルバン首相の側近2人の汚職疑惑を掲載した1週間後という同紙の活動停止のタイミングにも野党らは疑念を抱いている。

 60年の歴史を持つ同紙の上級編集委員は匿名を条件に「彼らはこれをビジネス上の決定ということにするだろうが、もちろんそれは事実ではない」、「調査報道と報道の自由に対する大きな打撃だ。ネープサバチャーグにはハンガリーで最も多くの優秀な記者がそろっており、基本的な自由、民主主義、言論の自由、寛容さを守ろうとしていた」とAFPに語った。

 野党・社会党は、ネープサバチャーグは「政治的復讐」の被害者であり、同紙の活動停止は「報道にとって不幸な日」だったとの見解を示した。

 ネープサバチャーグの社屋前では8日、AFP記者の推計で1500~2000人が集まってデモを行い、同紙印刷版を振って「オルバンは手を引け」と声を合わせて叫んだ。(c)AFP/Peter MURPHY