【10月4日 AFP】ヒトの細胞が有害な廃棄物や厄介な侵入者を処理する仕組み「自食作用(オートファジー)」は、全容解明はまだ道半ばだが、より長寿で健康な生活を実現する治療法の中心となる日が来るかもしれないと、専門家らは話している。

 2016年のノーベル医学生理学賞(Nobel Prize in Physiology or Medicine)が「細胞の自食作用の機構」を解明した日本の細胞生物学者、大隅良典(Yoshinori Ohsumi)氏に贈られることが3日、発表された。休みなく進行して、細胞を健康な状態に保つ「大掃除」プロセスのオートファジーは、進行が乱れると老化や病気を促進させると考えられている。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)の細胞生物学者、サイモン・ウィルキンソン(Simon Wilkinson)氏は、科学者らが「オートファジーを通常の処理量を超えて増進させる方法の発見」を目指して奮闘していると述べ、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患やがんなどの将来的な治療の可能性について言及した。

 ウィルキンソン氏は、AFPの電話取材に「オートファジーの作用を、通常と考えられるレベルよりさらに高めるための薬剤を発見できるだろうか」、「これらの恐ろしい病気を改善させることは可能なのだろうか」と語った。

 マウスやヒト細胞を用いた試験薬の実験では、オートファジーの促進が実際に可能であることが示されている。

「例えば、オートファジーを遺伝的に高めた系統のマウスモデルでは、マウスは実際に通常より健康に老化する」とウィルキンソン氏は話した。

 これは、具体的には、細胞内での損傷したタンパク質の急速な蓄積を減速させたり、加齢による代謝機能低下のペースを緩めたりすることを意味する。

「自ら」と「食する」というギリシャ語が語源のオートファジーは、動植物の細胞が、内部にある損傷したタンパク質や、細胞小器官と呼ばれる特殊化した構造体で、機能しなくなったものなどを除去するのに用いるプロセスだ。

 無用な廃棄物が無制限に蓄積すれば、細胞が傷つけられて正常な機能が損なわれ、健康上の問題が引き起こされると考えられる。

 オートファジーは、1960年代にはすでに科学者らに知られていたが、大隅氏は1990年代に酵母菌内で起きるこのプロセスを研究し、関与遺伝子を世界で初めて発見した。