【10月3日 AFP】(更新、写真追加)スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)は3日、2016年のノーベル医学生理学賞(Nobel Prize in Physiology or Medicine)を、東京工業大学(Tokyo Insitute of Technology)の大隅良典(Yoshinori Ohsumi)栄誉教授に贈ると発表した。受賞理由は「細胞の自食作用(オートファジー)の機構の解明」だった。

 オートファジーは細胞生理学の基本的な過程で、傷ついた細胞の秩序だった分解と再生に不可欠なプロセス。人間の健康や病気の発症に大きな影響を与えるとされる。一方、オートファジーの異常はパーキンソン病や糖尿病を引き起こす。

 細胞が自らの生体物質を膜組織で包み込み、リソソームと呼ばれる器官に運んで分解するオートファジーの能力をもつことが最初に観察されたのは、1960年代。だが、選考委員会によると、「この現象の研究は難しく、1990年代初めに大隅氏が酵母を用いた一連の素晴らしい実験でオートファジーに必要な遺伝子を特定するまで、ほとんど知られていなかった」という。

 委員会は、大隅氏の発見によって「細胞が自らの生体物質をリサイクルする仕組みの理解において、パラダイムが一新された」と述べた。また「オートファジー遺伝子の変異は疾患を引き起こす可能性があり、がんや神経疾患を含むいくつかの状態にオートファジーのプロセスが関与している」と説明した。

 大隅氏はNHKに対し「研究者としてこの上なく光栄なことだと思いました」と述べるとともに、「人がやらないことをやりたいというのが私の信念でした」と語った。(c)AFP