【9月30日 AFP】地球の平均気温は2050年までに「産業革命前より2度」とされている上昇抑制目標の上限値を上回る可能性があり、地球温暖化の危険領域に向かっているとする報告書が29日、発表された。世界有数の気候科学者7人が、報告書「気候変動についての真実」をまとめた。

「気候変動は今、起きている。予想よりもかなり早い速度で」と警鐘を鳴らすのは、政策立案者らに対する気候科学の集約を担う国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」元議長、サー・ロバート・ワトソン(Sir Robert Watson)氏。

 記者団への電話会談に応じた同氏は、「すべての主要な(温室効果ガス)排出者によるさらなる努力が伴わなければ、2度上昇への到達はさらに早まるだろう」と指摘した。

 英オックスフォード(Oxford)で先週行われた会議では、地球の平均気温は産業革命前と比べて1度上昇しており、今後10年以内に1.5度の上昇となる可能性もあることが専門家から報告されている

 昨年12月に195か国が合意・採択した「パリ協定(Paris Agreement)」では、温暖化を2度未満、可能であれば1.5度未満に抑えるとするより大きな目標を定めた。同協定は、年内に発効する見込みで国際協定としては記録的なペースとなっている。

 締約国は、温室効果ガス排出削減に向けた独自の目標を設定しているが、提示された内容では「不十分」と報告書は指摘している。

 ワトソン氏も、目標の2度未満を達成するには各国がより一層の努力をしなけれならないと述べ、「1.5度の目標を達成する見込みは文字通りないと言うのが妥当だと思う」と厳しい口調で語った。

 2015年は観測史上最も暖かい年となったが、欧米の政府系科学者らは、2016年の平均気温はさらに上昇すると予測している。(c)AFP