【9月26日 AFP】パレスチナ自治区を含むヨルダン川西岸地区(West Bank)には現在、イスラエルのサッカークラブ6チームが本拠地を置き、試合を開催している。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、これが国際法への違反にあたるとして、クラブの本拠地移転を求めている。

 26日に発表した報告書の中で、HRWは西岸地区という「盗まれた」土地での試合を黙認する行為は、国際サッカー連盟(FIFA)がイスラエルを支持するビジネス活動を行っているに等しいと指摘。これはFIFAが掲げる人権尊重の方針に反すると主張している。

 HRWでイスラエルおよびパレスチナ地域を担当しているサリ・バシ(Sari Bashi)氏は、「盗まれた土地で試合を開催することにより、FIFAはサッカーの美しさを汚しています」と声明を発表した。

 バシ氏はAFPに対し、「パレスチナ人が個人で所有しているのに、その本人が入れない土地で行われている試合もあります。パレスチナの農村が所有していた土地をイスラエル軍が占拠し、イスラエル国民だけしか使えないということにして、試合を行っているケースもあります」と話し、国際法を順守するためには、クラブが「本拠地をイスラエル国内に移す必要がある」と主張している。

 イスラエルは1967年の第三次中東戦争を経て西岸地区を占拠したが、パレスチナ人は、地区内で行われるイスラエルリーグへの参加をかたくなに拒否し続けている。西岸地区では、イスラエルリーグの3部、4部、5部の試合が開催されている。

 FIFAは10月13日と14日の理事会で、この件を話し合うとみられており、AFPに宛てた声明の中で、「FIFAは今後も、規約に従って加盟協会同士の友好関係を促進し、競技と関係者全員のためになる、実現可能な解決策を見いだす努力を重ねていきます」とコメントした。

 イスラエルサッカー協会(IFA)は報告書を受けて、スポーツが「グラウンドから政治の舞台へ引きずり込まれようとしている」とくぎを刺しながらも、FIFAが適切に対処してくれるはずだと述べ、「人々を分かつ壁ではなく、人々をつなぐ懸け橋として、サッカーを発展させ、維持すること」にまい進するとした。

 一方、パレスチナサッカー協会(PFA)は、アジア・サッカー連盟(AFC)と欧州連合(EU)に対応を求めたことを認め、FIFAの理事会には自分たちの立場を支持してほしいとうったえた。

 あくまで可能性の話ではあるが、問題が解決しない場合、PFAはイスラエルをFIFAから除名、または資格停止にするための活動を再開することも考えられる。(c)AFP