【9月25日 AFP】ベトナムがフランスの植民地だった時代は60年以上も前のことだが、今月上旬にベトナムを訪問したフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は、フランス統治時代を代表するレガシー(遺産)の一つである「バゲット」が目に入らないようにするには苦労したに違いない。

 パテを塗り、新鮮なコリアンダーとキュウリをたっぷりとはさんだもの、あるいは作り立てのバターを塗っただけのシンプルなものなど、バゲットで作る「バインミー」と呼ばれるベトナムのサンドイッチは、旧宗主国の影響が今日まで受け継がれていることを象徴する食べ物だ。

 ハノイ(Hanoi)のフレンチクォーター(French Quarter)地区で人気のパン店を営むグエン・ゴック・ホアン(Nguyen Ngoc Hoan)さんは、AFPの取材に対し「フランス人は、バインミーをとても誇りに思っている。フランス料理は、ベトナム料理に大きな影響を与えたと思う」と語った。

 庶民に人気の「プチパン」やプレーンなパンに肉や野菜、目玉焼きなどをはさんだバインミーをホアンさんが作り始めたのは、1987年のこと。それから5年後、ホアンさんは、20世紀初頭にフランス人が建てた名門ホテル「メトロポール(Metropole)」のベーカリーで働くまでになった。

 パン店を始めた当初、ホアンさんは、中はフワフワ、外はパリパリのベトナムパンを作っていたが、中国・上海(Shanghai)のフレンチベーカリーで修業をした後は、より中身が凝縮したフランス風のパンを作るようになった。