【9月16日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は15日、自転車ロードレースの最高峰ツール・ド・フランス(Tour de France)で3度の総合優勝を誇るクリス・フルーム(Chris Froome、英国)ら新たに25選手の医療記録が漏えいしたことを受け、ロシア政府に対して、同機関のコンピューターシステムへの不正アクセス阻止に協力することを求めた。露大統領府(クレムリン、Kremlin)は即座にこの要請に応じる意向を示すと同時に、いかなるハッキングへの関与も否定している。

 WADAのオリビエ・ニグリ(Olivier Niggli)事務総長は、「この犯罪行為を強く非難し、ロシア政府に対してハッキングの阻止に全権力を行使することを要請した」と明かした。

 同機関のコンピューターシステムが不正侵入を受けたことについて、ニグリ事務総長は、ドーピング問題を起こしたロシアの陸上競技選手がリオデジャネイロ五輪への出場をほぼ全面的に禁止されるなど厳しい処分を科されたことに対する「報復」であるという見解を示し、「われわれの独立調査チームであるリチャード・パウンド(Richard Pound)元会長とリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏が、ロシア政府主導のドーピングを暴いたことにより、これらの攻撃がWADAをはじめ、世界各国の反ドーピングシステムへの仕返しとして行われていることは間違いない」と主張した。

 これに対してドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)露大統領報道官は、「協力を求められることについては何の問題もない。そのような要請があれば応じる。ロシアは一貫してサイバー犯罪との闘いを支援し、この分野に関して世界中の国や国際組織との協力を歓迎しており、その立場を貫いていることは周知の通りだ」とコメントしている。

 これに先立ちWADAは13日、チーム・ツァーリ(Tsar Team)やAPT28、ファンシー・ベアーズ(Fancy Bears)などの名で知られるロシアのハッカー組織が、同機関の反ドーピング管理監督システム(ADAMS)と呼ばれるデータベースに不正侵入したと公表。このハッカー集団は、リオ五輪の体操女子で金メダル4個を獲得した米代表のシモーネ・バイルス(Simone Biles)や、同国女子テニスのセレーナ・ウィリアムス(Serena Williams)とヴィーナス・ウィリアムス(Venus Williams)姉妹らスター選手のファイルから情報を盗み出したとされている。

 15日に発表された新たな報告によれば、この集団は自転車ロードレースのブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins)やフルームなど英国を代表する選手を含め、計8か国25人の機密データを公開したという。

 ニグリ事務総長は、「衝撃にさらされている選手の皆さんへ、犯罪者がこのような形であなた方の名声を汚そうとしていることは誠に遺憾です」と述べた。

 一方、ビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)露スポーツ相は、一連のハッキングを画策したとの疑いを一蹴し、「どのようにしてロシアのハッカー集団であることを証明できる?何でもロシアのせいにしている」と反論した。(c)AFP