【9月14日 AFP】11日に行われたリオデジャネイロ・パラリンピック、陸上男子1500メートルT13(視覚障害のクラス)では、アルジェリアの双子ランナーであるアブデラティフ・バカ(Abdellatif Baka)がパラリンピック新記録で優勝した。しかし、このレースでは優勝タイムよりも話題になっているものがある。双子の弟で、4位入賞を果たしたフォーダ・バカ(Fouad Baka)までの4人が、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したマシュー・セントロウィッツ(Matthew Centrowitz、米国)を上回るタイムを記録したのだ。

 22歳のアブデラティフは、パラリンピック記録となる3分48秒29で優勝。セントロウィッツのタイムは3分50秒00だった。アブデラティフは快挙の秘訣(ひけつ)について、「練習です」と謙虚に話している。

 この結果は、パラリンピックの今後に関する議論をさらに白熱させる可能性がある。近年、五輪とパラリンピックでトップ選手の実力差は徐々に縮まっており、パラリンピアンはすでに五輪の扉をたたいているとの声が強まっていたが、門戸開放へ向けてこれは重大な結果にみえる。

 しかし、現実として話はそう簡単ではない。アブデラティフのタイムがパラリンピック史上最速だったのに対して、セントロウィッツのタイムは五輪でもめったに見ないレベルの遅さだったからだ。

 1500メートルは戦略が重要な種目で、単純なスピードだけではなく、集団での駆け引きが勝負のカギを握る。今回のリオ五輪では、これまでにないほどの戦略重視のレースが展開され、セントロウィッツの自己ベストが3分30秒40であることを踏まえれば、状況次第ではもっと速く走れたのはほぼ間違いない。

 それでも、優勝が「驚き」と語るバカも、目指していたのは表彰台であってタイムではないと話している。

「最後の300メートルで持っていたものをすべて出しました。非常に戦略的なコースですし、うまくいったのを誇りに思います」

(c)AFP/Jessica LOPEZ