■司法の機能不全

 ジャクマリャの起源は、日常生活の規則を定めた「カヌン(Kanun)」と呼ばれる社会規範がつくられた15世紀の中世アルバニアにさかのぼる。カヌンでは、誰かが殺害されたら、被害者の家族は加害者本人だけでなく、加害者の氏族の男性全てを復讐の対象にできると細かく規定している。

 シュコドラ町のボルタナ・アデミ(Voltana Ademi)町長は、こうした血の抗争に巻き込まれた一族は「殺すか殺されるか」を意識しながら暮らしていると話す。

 一方で、問題はカヌンではなく、現在のアルバニア当局の対応にあるという見方もある。憎み合う一族間の和解を支援する団体で働くギン・マルク氏は、「国の機関や司法システムが機能しなければ、人々は問題の解決策を見つけられない」と指摘する。

 アルバニアは特に、1990年代に一党独裁体制が崩壊して一時無法国家に近い状態に陥った影響で、伝統的な血讐文化の影響を受けやすくなっている。

 今年4月に発表された公式統計では、66家族の計157人が隠れて暮らしていると推定され、うち44人が子どもという。このうち57前後の家族がシュコドラ周辺で暮らし、警察や当局への通報はめったにないとされる。ただ、ジャクマリャの脅威を口実に外国で虚偽の難民申請をする人もいるため、正確な統計は入手しにくいのが実情だ。(c)AFP/Briseida MEMA and Nicolas  GAUDICHET