【8月31日 AFP】米アメリカンフットボール(NFL)、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)のQBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が国歌演奏での起立を拒否したことが、大きな議論を呼んでいる中、元米プロバスケットボール協会(NBA)選手のカリーム・アブドゥル・ジャバー(Kareem Abdul-Jabbar)氏と元NFL選手のジム・ブラウン(Jim Brown)氏という、米スポーツのレジェンド2人が、キャパニック支持のため立ち上がっている。

 26日に行われたグリーンベイ・パッカーズ(Green Bay Packers)とのプレシーズンマッチで、米国歌「星条旗(The Star-Spangled Banner)」演奏の際にキャパニックが立ち上がらなかったことで、猛烈な勢いで賛否両論が巻き起こっている。

 キャパニック自身は、国内の黒人の窮状を知ってもらうために抗議を行ったと話しているが、共和党から大統領選の候補に指名されているドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が、「とんでもない話だ。自分に合った国を見つけた方がいいんじゃないかな。好きにさせてやれ。そんな場所ありはしないが」と話すなど、キャパニックへの批判の声は高まっていた。

 しかし、国内でとりわけ大きな尊敬を集めるスポーツ界の長老的存在で、以前から黒人の権利を熱心に訴えているジャバー氏とブラウン氏は、キャパニックへの賛同の意思を表明している。

 ジャバー氏は米CNNテレビで、「彼はトーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson)の言葉をそのまま実行した。すなわち、声を上げろだ」と話した。

「やり方やタイミングが気に入らない人もいるだろうが、それでも彼は、自分が大事だと思う問題への関心を高めようとしているし、彼にはそうする権利がある」

 また、ワシントン・ポスト(Washington Post)紙の論説では、ベトナム戦争への徴兵を拒否したモハメド・アリ(Muhammad Ali)氏や、1968年のメキシコシティー五輪で、拳を掲げる抗議行動を敢行したトミー・スミス(Tommie Smith)氏やジョン・カーロス(John Carlos)氏ら、黒人差別に対するスポーツ選手の抗議の文脈にキャパニックを置き、次のように語った。

「本当に恐ろしいのは、国歌の演奏中に立ち上がらないというキャパニックの選択ではなく、自らの姿勢を貫いて王座をはく奪されたアリや、拳を掲げてみなからつまはじきにされ、何度も死の脅迫を受けたトミー・スミスやジョン・カーロスから50年近くが経つというのに、同じ人種不平等にいまだに注目しなくてはならないことだ。この問題が未解決であることが、この国の実に反米国的な現状を物語っている」

 ブラウン氏も、NFLの専門チャンネル「NFLネットワーク(NFL Network)」で、キャパニックを「100パーセント」支持すると話している。

「彼の意見を聞いたが、すべて筋が通っている。自分の持つ権利の範囲内で、自分の目に映った真実を伝えようとしている。私は100パーセント、キャパニック側だ」

 フォーティーナイナーズとNFLは、国歌演奏に際しては起立することを推奨しているというが、規則で決まっているわけではなく、キャパニックに罰則が科される可能性は低い。(c)AFP