【8月28日 AFP】トルコ当局は27日、先月15日に起きたクーデター未遂事件に関連し、元高位外交官3人を逮捕した。うち1人は米国を拠点とするイスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師とトルコのアフメト・ダウトオール(Ahmet Davutoglu)前首相との会談を仲介したという。

 国営アナトリア(Anadolu)通信の報道によると、首都アンカラ(Ankara)の裁判所は、ギュレン師との関連容疑によりグルジャン・バルック(Gurcan Balik)、アリ・フンドゥク(Ali Findik)、トゥンジャイ・ババル(Tuncay Babali)の3氏に対し、裁判を前にした再勾留の命令を下した。3人は同市のシンジャン(Sincan)刑務所へ移送された。

 バルック氏はアブドラ・ギュル(Abdullah Gul)前大統領の首席外交顧問を務めた経験を持つ。ギュル氏は2007~14年、レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)現大統領の前任者としてトルコの大統領を務めていた。

 またバルック氏は、ダウトオール前首相が外相を務めていた際の外交政策顧問としても活躍した。アナトリア通信によると、バルック氏はダウトオール前首相が外相を務めていた2013年、米ニューヨーク(New York)で開催された国連総会(UN General Assembly)出席のため訪米した際、ギュレン師とダウトオール氏の会談を仲介したとして物議を醸していた。

 ダウトオール前首相は2015年5月、米東部ペンシルベニア(Pennsylvania)州に住むギュレン師を訪問し、政府内の緊張緩和のためトルコに帰国するよう促したことを認めた。ダウトオール氏は、ギュル前大統領とエルドアン現大統領が会談について承知していたと主張しているが、ギュル氏は会談後にその事実を知ったと述べている。

 ダウトオール前首相は2015年、ギュレン師との会談に関して全く秘密はなく違法行為も行われていないと主張し、「問題を隠したり、政府の記録にない会談を行ったりしたことは私の生涯で一度もない」と述べた。

 バルック氏は短期間トルコの国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)大使を務めた経験を持つ。ババル氏はトルコの駐カナダ大使、フンドゥク氏は駐コスタリカ大使を務めた経歴があるが、2014年初頭以降は現地派遣されていない。バルック氏は今月19日、他の2人は同18日にそれぞれ当局に拘束されていた。

 同国ではクーデター未遂以来、エルドアン大統領が「ウイルス」と呼ぶギュレン師の影響を排除するために政府機関の粛清を断行している。バルック氏の逮捕は、与党・公正発展党(AKP)指導部の関係者がクーデター未遂に関連して逮捕された初期の事例の一つとして注目を集めている。

 ギュル前大統領とダウトオール前首相は共にクーデター未遂を強く批判しており、この2人とクーデター未遂との関連が取り沙汰されたことはない。

 トルコではクーデター未遂後、現在までに全政府機関で公務員約7万人が追放されており、その半数以上が教育関係者という。同国では現在も毎日のように粛清が行われており、法曹、ビジネス、政府関係者など2万人以上が当局に拘束されている。(c)AFP/Stuart Williams