【8月24日 AFP】若年期に脳振とうなどの外傷性脳損傷を受けた人は、損傷を受けていないきょうだいに比べて、長期に及ぶ心理的・社会的問題に悩まされる恐れがある。大規模調査に基づく研究結果が23日、発表された。

 米オンライン医学誌プロス・メディシン(PLOS Medicine)に発表された今回の研究は、25歳までに外傷性脳損傷を1回以上受けた経験がある、1973年~1985年生まれのスウェーデンの子どもおよび若者ら約10万人を対象に実施された。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)のシーナ・ファゼル(Seena Fazel)氏率いる研究チームは、このグループと損傷を受けていないそれぞれのきょうだいとの比較を行い、41歳を上限とする成人期に至るまで追跡調査した。

「調査の結果、外傷性脳損傷により、早死に、精神科への入院、精神科への外来通院、障害年金や生活保護の受給、低学歴などの将来的なリスクが一貫して予測されることが判明した」と論文は述べている。

 さらに「損傷の程度と再発の頻度が高いほど、また最初に損傷を受けた時の年齢が高いほど、この影響は強くなる傾向がみられた」とも付け加えられた。

 論文の参考情報によると、外傷性脳損傷は、世界における45歳未満の外傷と死亡の原因の第1位となっているという。

 スウェーデンの保健記録100万人分以上に基づく分析によると、若者の約9%が、生涯で何らかの外傷性脳損傷を経験すると考えられているという。

 今回の研究には参加していないが、カナダ・トロント大学(University of Toronto)のドナルド・レデルマイヤー(Donald Redelmeier)氏らは、論文と同時に掲載された解説記事で、研究の追跡調査期間の中央値は8年にすぎないため、より長期にわたる脳損傷の影響については不明のままだと指摘している。

 また、今回の研究では、脳損傷が後年に種々の問題を引き起こしたことの証明は不可能で、関連性の存在を示すにとどまっている。

 だが、英エクセター大学(University of Exeter)のヒュー・ウィリアムズ(Huw Williams)准教授(臨床神経心理学)は、今回の研究を「信じられないほど説得力がある」と評しており、「研究チームは、あらゆる種類の共変量と外的影響(交絡)因子の取り扱いに念には念を重ねて取り組んでいる上、今回の研究内容は、(スポーツ、犯罪、メンタルヘルスなどの)幅広い分野において、さまざまな重篤性の外傷性脳損傷が長期的な問題となることで一貫している」と説明している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN