【8月16日 AFP】インド北東部で発生した洪水により群れからはぐれてバングラデシュ領内にたどり着き、少なくとも1700キロ移動してきたとみられるゾウが16日、懸命の救護活動もむなしく命を落とした。

 流されてきたゾウが国境を越えてバングラデシュにやって来たのは6月下旬。サファリパークへ移送しようと、3度にわたって鎮静剤が投与された。しかしゾウは衰弱し切っており、回復のために大量の生理食塩水が与えられ、同国北部の村の水田でつながれていた。

 野生生物保護を担当する政府職員のアシット・ランジャン・ポール(Ashit Ranjan Paul)氏によると、このゾウはインドのアッサム(Assam)州で発生した大規模な洪水で群れからはぐれ、1700キロ以上の距離を移動してきたとみられるという。「ゾウを救うため、できる限りのことはやった。これまで48日間にわたり、森林警備隊員や獣医師、警察官ら少なくとも10人が常に付き添ってきたが、運は尽きた」と肩を落とした。

 一方で地元メディアは、ゾウは立っていられないほど衰弱しており、鎮静剤の過剰投与が死因になったと非難した。

 これに対しポール氏は、「あれほど長い距離を移動したために疲れ切ってしまったのだ。群れから約2か月離れ、必要な栄養が得られなかった」と反論した。

 また「バングラデシュにやってきたゾウは、村々を通り、ブラマプトラ(Brahmaputra)川の中州にある島々を移動する際、何千人もの村人に連日つきまとわれた」と指摘。長い道のりを移動してきたことこそがゾウの死の原因となったのであり、好奇の目を向けゾウの跡をつけ回した何千人もの地元住民らによって、ゾウの命を救う努力が妨げられたとの見方を示した。(c)AFP