【8月13日 AFP】米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官は12日、2015年の確定申告書を公開し、米大統領候補の慣例になっている確定申告書の公開をしていない共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏を批判した。

 クリントン氏のウェブサイト上に公開された確定申告書によると、同氏と夫のビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領には昨年1年間で夫婦合わせて1060万ドル(約10億7000万円)の収入があり、うち360万ドル(約3億6000万円)を連邦所得税として納めていた。

 クリントン夫妻は1977年から毎年確定申告書の内容を公開しており、民主党ではこれまで数回にわたり、この事実を同夫妻の透明性の証拠だと指摘してきた。また民主党の副大統領候補、ティム・ケーン(Tim Kaine)上院議員も12日、過去10年分の確定申告書を公開した。

 しかし不動産王の資産家トランプ氏は、過去数年分の確定申告書が現在監査を受けているとして公開を拒否している。

 クリントン陣営の広報責任者ジェニファー・パルミエリ(Jennifer Palmieri)氏は、「ドナルド・トランプはまやかしの言い訳の影に隠れて、確定申告書を公開するという約束を撤回している」「一体何を隠そうとしているのか?」と述べた。

■クリントン夫妻、収入の内訳は

 クリントン夫妻が得た所得の大半はビル・クリントン元大統領の講演料で所得のうち520万ドル(約5億3000万円)を占め、加えてヒラリー・クリントン氏の著書に対する米出版社サイモン&シュスター(Simon & Schuster)からの支払いが300万ドル(約3億円)あった。

 ヒラリー・クリントン氏は2013~15年に有料の講演を数十回行ったが、2015年4月に大統領選に立候補したことから、その後は講演活動を停止している。またクリントン夫妻は、同夫妻の名前を冠した慈善団体に100万ドル(約1億円)の寄付も行っていた。

 政治情報サイト「ポリティファクト(Politifact)」によると、1980年の大統領選で当選したロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏以降、過去9回の米大統領選で、共和・民主両党候補全員が、少なくとも前年の確定申告書を公開してきた。

 候補者の大多数は複数年分の確定申告書を公開している。米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)によると、1996年の共和党大統領指名候補ボブ・ドール(Bob Dole)氏は過去29年分を公開したという。また2012年の大統領選共和党候補ミット・ロムニー(Mitt Romney)氏は過去2年分を公開した。

 トランプ氏は今年5月、連邦選挙委員会(FEC)に提出した個人資産の報告書で十分だとしているが、この書類にはトランプ氏の資産や負債、所得の概算しか記載されていない。

 トランプ氏は自分の資産は100億ドル(約1兆100億円)以上あると豪語しているが、この主張を独自に確認できた人は誰もいない。米経済誌フォーブス(Forbes)は、同氏の資産を半分以下の45億ドル(約4600億円)と推定している。

 民主党では、トランプ氏が確定申告書を公開しない理由として、同氏が主張するほどの所得を得ていない、税金を少額しか、またはほとんど納めていない、または慈善事業への寄付をほとんどしていないことが理由ではないかと疑っている。(c)AFP