■食物連鎖の「層」を調べるアプローチ

 今回の研究で、ペデルセン氏と研究チームは、堆積物の中から、「ある特定」の植物や動物の遺伝子を探すというこれまでの標準的なアプローチではなく、微生物や菌類、さらには植物やほ乳類に至るまでの食物連鎖の「層」を調べる別のアプローチを採用した。

 研究チームが堆積物のコアサンプルの採取場所として選んだのは、かつて内陸廊下の「難所」だったとされる場所だ。その一部は現在、カナダ・ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州のチャーリー湖(Charlie Lake)の下に沈んでいる。

 研究チームは、ここからサンプルを採取し、放射性炭素年代測定法で調べたところ、約1万2600年前までは、この周辺地域に生物がほぼ存在していなかったことが判明した。

 ただ、生態系は急速に変化する。以降、数百年以内にはヤマヨモギなどの草が生い茂るようになり、その後は、バイソンやケナガマンモスなども生息するようになった。そして、約1000年後には、一帯には木々が生い茂り、ヘラジカなどの動物が数多く生息する自然豊かな場所へと変化していったという。

 今回の研究結果について、英ノッティンガム大学(University of Nottingham)のスザンヌ・マクゴワン(Suzanne McGowan)氏は、太古の世界へと扉を開き、人類がいかにしてアメリカ大陸に到達したかについての重要な再考察の礎(いしずえ)となったとコメント。沿岸移動説の可能性も高まったと指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD