【8月24日 AFP】タイの電力網から外れた森の奥地にあるパデン(Pa Deng)村は、一風変わった代替エネルギー源をいち早く採用し、その伝道師役も担うことになった。そのエネルギー源とは「牛ふん」だ。

 パデン村の住民たちは、牛ふんを燃料にしたコンロで料理をしたり、太陽光パネルで発電した照明で屋内を明るくしたりすることに成功。化石燃料に圧倒的に依存するエネルギー大量消費国のタイにあって、クリーンエネルギーの先導者を演じている。

「最初はとても信じられなかった」。果樹に囲まれ、ミャンマーとの国境を形作る山並みが影を落とす木造りの家。その前でAFPの取材に応じた住民のウィスット・ジャンプラパイさん(44)は、牛ふんがコンロの燃料に使えると教えてくれたのはミャンマーからの友人だったと明かす。ただ、村人の当初の反応は否定的なものだったという。

 しかし、国の電力網が利用できない半面、肥やしなら山のようにある。試してみる価値はありそうだ。ウィスットさんと近所の人たちはそう考えた。

 その後、村人たちは長年の試行錯誤の末、牛ふんなどをポリエステル製の大きな袋に入れてガスを発生させ、それをコンロの燃料にする方法を考案。今ではこのシステムを利用したコンロが、村内の100世帯近くの家に備えられている。

 青いこの袋の中では、動物のふんなどの有機廃棄物を微生物が分解。その際に発生するメタンガスが詰まっている。この燃料は木を燃やすより環境に優しく、持続可能性も高い。それに村人たちは、薪を取るためにわざわざ森に出向かなくても済む。

「難しいことは何もないよ。食べ物と排せつ物を入れるだけさ」。このコンロシステムのリーダー役を務めるコソル・セントンさんは説明する。「そしたらガスが出てくるんだ」(c)AFP/Sally Mairs