【8月9日 AFP】ドイツで、ドイツ語も英語も話せない中国人旅行者が、亡命希望者と勘違いされ2週間近く難民向け施設に収容されていたと、赤十字(Red Cross)が8日、明らかにした。

 ドイツ赤十字の関係者によると、この中国人バックパッカーの男性(31)は先月4日、ドイツ南部シュツットガルト(Stuttgart)の空港に到着した後、財布を無くしたことに気が付いた。

 当局者らは、ドイツ語も英語も話せないこの男性が「助けを必要としていた」ため、近隣のハイデルベルク(Heidelberg)にある移民・難民の受け入れ施設に連れて行った。男性は地元当局に指示されるまま、自分が何を書いているのか理解せずに文書に記入した。その用紙は難民申請書だった。

 2日後の先月6日、男性は西部ドルトムント(Dortmund)にある受け入れ施設に移送されて旅券を預け、その後オランダ国境に近いデュルメン(Duelmen)にあるシェルターに収容された。

 公共放送の西ドイツ放送(WDR)によると、男性は難民向けの一般的な手順にのっとり指紋の採取に応じ、健康診断を受け、「小遣い」も受け取っていたという。

 しかし施設職員らが、男性が亡命申請者にしては整った身なりをしていることに気が付き、間違いではないかと思い至ったため、地元の中国料理のレストランに協力を要請した。

 レストランの店主らからスマートフォンの中国語翻訳アプリを使ってみてはという提案を受け、早速試したところ、男性が希望していたのは亡命ではなく、欧州旅行の続行だったことがたちまち判明した。ドイツに12日間滞在した男性はその後、フランスとイタリアへ向けて旅立った。WDRは、男性が「想像していた欧州とは違う」と語ったと伝えた。

 昨年だけで110万人近い移民や難民を受け入れたドイツの行政には過度の負担がかかり、大きな問題になっている。(c)AFP